虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「暗黒街の対決」(1960年製作)★★★★★


 三船敏郎鶴田浩二主演。


 二大ヤクザ軍団が火花を散らし、警察は無力化している、暴力と混沌が支配する荒神市。そこに現れるは三船敏郎演じる男。彼は東京から横領をした門で左遷されてきた刑事だった。警察で鼻つまみ扱いされながら、2つのヤクザについて飄々と嗅ぎ回る三船。そんな中、彼は妻を轢き殺された元やくざのバー経営者(鶴田浩二)と出会う。


 治安の荒れ果てた街で三船敏郎がやくざと渡り合う映画、っつーと黒澤明監督の「用心棒」を思い出すけれども、後で調べたら、この映画、「用心棒」(61年製作)の前年に作られているのだった。驚き。「ーの顔役」の翌年に公開されたにも関わらず、演出は雲泥の差。喜八タッチ、早くも完成の域。細かく割られたカット割りと躍動する編集が絶妙のテンポを生み出してる。すごい。演出みてるだけで楽しい。
 脚本もいい。ヤクザの抗争から一方が潰れ、やがてヤクザと警察の対立にストーリー軸を移していきながら、様々な人間の思惑を錯綜させていく群像劇としても見応えある。時代についていけずに滅びの道を行く組長とか、唄う殺し屋軍団、兄のために愛人になるホステスとか、脇キャラにいたるまで魅力的なキャラ造形が出来てるので、ほんと、三船と鶴田の存在の重さを頼みに、物語を軽やかに運びながら、怒濤の様なクライマックスと共に、ほろ苦い復讐譚として物語は幕を閉じる。


 演出・脚本・キャスト、すべてがぴたりと決まった傑作。必見。