虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「土竜の唄」

toshi202014-02-17

監督:三池崇史
脚本:宮藤官九郎
原作:高橋のぼる



 スケベで体力には自信があって、だけど正義感と人情に篤いがゆえに大暴走しちゃう若い交番巡査・菊川怜二(生田斗真)が、女子高生に不道徳な行いをしようとした市会議員に怒りのあまり、銃を向けて脅してしまい、渡りに舟でクビにされ、麻薬犯罪撲滅のため、「数寄矢会」の頂点を逮捕するための「潜入捜査官」にされてしまう話。


 原作は未読なんだけど、昨今の青年漫画というだけあって、ノリと勢いだけで突破する物語はザッツ・ジャパニーズ・マンガ!という感じの話である。潜入捜査官のための試験を突破し、署長から「お前はスーパーエリート潜入捜査官だ!」っておだてられて潜入したはいいものの、要は「死して屍拾う者なし」なお役目なわけで、そんな役目を正義感と自慢の体力とヤンキーノリでヤクザ社会で成り上がろうとする直情径行な主人公のメンタリティーは、「不良漫画」冬の時代の青年マンガにおける、新たな「ヤンキーマンガ」の形なのかな、という感じはする。
 そういう意味では「クローズZERO」シリーズを成功させた三池崇史に白羽の矢を立てたのはまさに慧眼。宮藤官九郎の脚本の小ネタとギャグを織り交ぜた童貞ヤクザアクションコメディーとして完成された脚本なのだが、三池演出の暴力を描くときに醸し出す不穏さと、下ネタ&お色気ネタが必要以上に下品な仕上がりになる辺りはさすがである。
 三池監督のギャグ演出はそれほど巧いとは思わないんだけど、ヤンキー漫画ノリでヤクザ社会を生き抜く主人公の話なので、とにかく、三池監督との相性は抜群で、ドシリアスな展開になってからのハマり方はさすがである。


 クドカンとしては、そんな話を映画化するに辺り、どこか懐かしい「木更津キャッツアイ」のノリがより下品な形で復活した感じで、死と隣り合わせの世界に生きる青年のコメディー、という題材は、考えてみればかつてのクドカンの重要なモチーフだったので、どこか懐かしさを感じさせる映画になってるのも面白いところだ。


 主人公の「アニキ」的存在になる堤真一も、にぎやかし兼悪役という役回りの岡村隆史も、主人公のクールな「相棒」になる山田孝之も十分面白いのだが、3人とも自分のレパートリーの中にあるものから引き出してきっちり仕事をこなしている感じの中、豹の模様を全身に彫り込んだヒットマン役の上地雄輔の演技がより印象深い。見せ場も多いし、彼にとってはかなりもうけ役な感じである。
 シリーズ化も十分狙えるほどのクオリティーに仕上がっているので、職業監督として三池監督がきっちり仕事をした娯楽作として十二分に楽しめる映画になっています。(★★★☆)