2022年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。
みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。
もうすっかり「Twitterで映画感想を書く人」になりつつありますが、今も映画を見続ける事が出来ています。ありがたい事です。
毎年毎年、驚くべき出来事、悲しい出来事が続く時代にいて、それでも物語は、映画は時に時代の影響を受けて、時に時代を超越しながら生まれ続けている事が、暗い時代の道標であるような、そんな気もしているのです。
というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。
10位「ユンヒへ」
「ユンヒへ」。すごくよかった。韓国の地方都市で高校生の娘と暮らすユンヒの元に、20年前別れた小樽に住む初恋の女(ひと)から届いた一通の手紙。それがきっかけで始まる、娘との小樽への旅。止まっていた時がゆっくりと動き出す、同性愛者の中年女性の人生の再生を真正面から描くラブストーリー。 pic.twitter.com/Aa5x5PJddi
— 窓の外 (@madosoto) 2022年1月11日
<選考理由>
長くずっと「自分」を押し込め殺して生きてきた韓国の主婦が、「初恋の女(ひと)」からの手紙をきっかけとした小樽への旅を通して自分を取り戻す。そのなんとも言えぬ社会の残酷さと、その過去を優しく新たな記憶で覆っていくように、未来へと歩く勇気を手に入れる。そんな物語にしみじみと涙してしまったのでした。
9位「NOPE」
「NOPE」IMAX。めっちゃ面白かった。映画黎明期の「馬と騎手の連続写真」の「騎手役(知られざる映画スター)の子孫」を自認する兄妹。父の不慮の死で若くして牧場経営することになった兄のOJはある夜、空に「巨大な何か」を目撃し、妹と共に対峙する事になる。映画的に敵を「SHOOT」する西部劇。傑作。 pic.twitter.com/2E3JoNxuwN
— 窓の外 (@madosoto) 2022年9月5日
<選考理由>
ジョーダン・ピール監督の新作は、ジャンルとしてはSFスリラーという事になるんだろうけど、映画の原初的衝動である「撮る」事が「敵と戦う事」と同期してくる展開、最高です。大好きな映画です。
8位「神々の山嶺」
「神々の山嶺」。素晴らしい。登山家ジョージ・マロリーの遺品のカメラの行方を起点とし、山に人生を囚われ続ける男と、彼の行方を追い、やがてその人生に魅せられていく男。2人の邂逅とその顛末を描いた傑作の完全アニメ映画化。そのクオリティに終始息を呑む。映画館という空間でこそ見るべきだ。 pic.twitter.com/KI04cOVvcb
— 窓の外 (@madosoto) 2022年7月10日
<選考理由>
夢枕獏の小説を谷口ジローが漫画化したコミックを下敷きにフランスでアニメ映画した作品で、日本描写に多少の瑕瑾はあるものの、とにかく丁寧にアニメーションとして落とし込み、登山家という「山に囚われた人々」の魂に、多少なりとも触れることが出来る追体験映画。映画館で見れて良かったです。
7位「こちらあみ子」
「こちらあみ子」。大沢一菜ちゃんがすごい。本当に「田中あみ子」という「生物」がスクリーンの向こう側にいる感じと、その無垢故に時に残酷で容赦ない彼女の振る舞いに振り回される周囲の人々の気持ちも痛いほどわかってしまう。彼女の存在こそが、このなんとも切ない結末を引き受けるところが白眉。 pic.twitter.com/RSVdujpEUU
— 窓の外 (@madosoto) 2022年7月27日
<選考理由>
ずっと長いトゲのように心に刺さり続けてる映画。多分僕らが子供の頃、多かれ少なかれ持っていた無邪気であるが故の残酷さをヒロイン「あみ子」が体現しているからで、だからこそ彼女を演じた大沢一菜さんの演技がこの映画の結末の、その全てを引き受けるほどの大きな器でもある映画だと思うのです。
6位「キングメーカー」
「キングメーカー」。1960年代。薬剤師ソ・チャンデは、理念は良いが選挙に勝てない政治家キム・ウンボムに直訴。彼はウンボムの影の存在として暗躍し、狡知に長けた選挙戦を展開。やがてウンボムは野党の大統領候補に。だが歴史はやがて2人の絆に皮肉な運命を用意する。激シブ政治サスペンスの傑作。 pic.twitter.com/6thCIjIHmj
— 窓の外 (@madosoto) 2022年8月14日
<選考理由>
国民の声を反映させる為の選挙という「システム」の中で、その「穴」を巧みに利用する頭脳戦の面白さ、そこまでして「勝たせたい」と思わせる魅力的な政治家を体現するソル・ギョングの演技、目的が手段を正当化させた結果の皮肉な顛末など、政治サスペンスとしての面白さだけではない深度を持った傑作です。
5位「メタモルフォーゼの縁側」
「メタモルフォーゼの縁側」。尊い。そして尊い。尊いの二乗。お婆さんと女子高生がひょんな事からBLの「同好の士」となった事で始まる、2人の青春。「ささやかだけど、切実で大きな変化」のその眩しさ。作品との出会いの喜び、創作のはじめの一歩の苦しさと得るモノを共有する事はなんと素敵な事か。 pic.twitter.com/hPg1l47tvJ
— 窓の外 (@madosoto) 2022年6月19日
<選考理由>
75歳と17歳。偶然出会ってしまった2人の女性が互いに踏み出すはじめの一歩。その尊さを描いた映画です。この映画の批評で「女子高生がメンターに導かれる物語」というものがあったけれど、それは違うんですね。2人は「共に歩む」存在なんです。だからこそ、この2人の関係性はこんなにもキラキラと輝いているのだと思います。チョー好き!
4位「RRR」
「RRR」。1920年大英帝国支配下のインド。とある部族の少女が英国軍に連れ去られ、部族の守護者ビームはデリーに少女を救いに来た。そこで彼はある事件で出会った青年ラーマと意気投合し、友情を育む。その青年は彼を追う、鋼の意思を持つ英国直属の警官だった!流転する数奇な運命を描く大作。最高! pic.twitter.com/eu1W5qeQYG
— 窓の外 (@madosoto) 2022年10月21日
<選考理由>
大英帝国支配下にあるインドを舞台に、熱き友情!すれ違い!裏切り!ダンス!アクション!駆け引き!サスペンス!ロマンス!やがて訪れる、絶体絶命の危機また危機!かーらーの、反骨の大逆転劇!と娯楽映画に欲しいものは全てある!まさに、極上の満漢全席映画です。
3位「ペルシャン・レッスン」
「ペルシャン・レッスン」第二次大戦下。ユダヤ人のジルは、偶然入手した本によりペルシャ人と偽りナチス親衛隊の処刑を免れるが、大尉のペルシャ語覚えたいという要望に「あるもの」を利用し偽ペルシャ語をでっち上げる。少しでも対応間違えれば死に直結する収容所で彼が守り通したものとは?ド傑作。 pic.twitter.com/y1mFLxnsdz
— 窓の外 (@madosoto) 2022年12月7日
<選考理由>
生き延びる為の「嘘」、それを維持する為の「手段」、幾重にも色を変える主人公と大尉の「関係性」。自らが生き延びながらも周囲の人々が次々と死地へと送られる理不尽な場所で主人公が導かれる結末に、ただ震えました。
2位「トップガン マーヴェリック」
「トップガン マーヴェリック」。誰しも老いる。万年青年ではいられない。いつまでも最前線には身を置けない。でも。「トム・クルーズである事」を下りるのは「今ではない」。その覚悟を言葉でなく、生き様と行動と老いゆく自らの全身で語りかけてくる恐るべき映画で、思わず泣いてしまった。最高。 pic.twitter.com/AeFctcmNDp
— 窓の外 (@madosoto) 2022年5月27日
<選考理由>
今年もっとも繰り返し映画館で見た映画です。36年の時を経て公開された「トップガン」の続編が、これほどの深みを感じさせてくる大傑作になるとは思いもしなかった。初見で衝撃を受け、何度も何度も映画館に通い、IMAX、4DXと味わい尽くしてなお、また見たくなる。そんな映画でした。
1位「THE FIRST SLAM DUNK」
「THE FIRST SLAM DUNK」。原作のクライマックスにして湘北高校バスケ部伝説のベストマッチ、「山王工業高校戦」を原作者・井上雄彦自らが全力再現しつつ、それを縦糸に「原作で語られた物語」の中に漫画家キャリアすべて賭けたストーリーテリングで「語りきれなかった物語」を叩き込む大傑作。号泣。 https://t.co/co7jAYOa0a
— 窓の外 (@madosoto) 2022年12月6日
<選考理由>
僕が映画を見にいく理由。それは「見た事ない景色」を見にいく事だったりします。本作は原作者の井上雄彦自らがオリジナルエピソードを交え監督したアニメーション作品ですが、自らの作品世界を「アニメーション」の世界へ落とし込むどころか、アニメーションを使って表現の可能性を「拡張」さえしてみせた。
その結果、アニメーションとしても「未知の領域」へと踏み出したこの映画、見終えてその天才のストイックな凄みと作品が導かれたその高み、ただただシビれました。脱帽です。
映画はまだ進化できる。