虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

2022年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。


 みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。
 もうすっかり「Twitterで映画感想を書く人」になりつつありますが、今も映画を見続ける事が出来ています。ありがたい事です。

 毎年毎年、驚くべき出来事、悲しい出来事が続く時代にいて、それでも物語は、映画は時に時代の影響を受けて、時に時代を超越しながら生まれ続けている事が、暗い時代の道標であるような、そんな気もしているのです。

 というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。

10位「ユンヒへ」


<選考理由>
長くずっと「自分」を押し込め殺して生きてきた韓国の主婦が、「初恋の女(ひと)」からの手紙をきっかけとした小樽への旅を通して自分を取り戻す。そのなんとも言えぬ社会の残酷さと、その過去を優しく新たな記憶で覆っていくように、未来へと歩く勇気を手に入れる。そんな物語にしみじみと涙してしまったのでした。

9位「NOPE」


<選考理由>
ジョーダン・ピール監督の新作は、ジャンルとしてはSFスリラーという事になるんだろうけど、映画の原初的衝動である「撮る」事が「敵と戦う事」と同期してくる展開、最高です。大好きな映画です。

8位「神々の山嶺


<選考理由>
夢枕獏の小説を谷口ジローが漫画化したコミックを下敷きにフランスでアニメ映画した作品で、日本描写に多少の瑕瑾はあるものの、とにかく丁寧にアニメーションとして落とし込み、登山家という「山に囚われた人々」の魂に、多少なりとも触れることが出来る追体験映画。映画館で見れて良かったです。


7位「こちらあみ子」


<選考理由>
ずっと長いトゲのように心に刺さり続けてる映画。多分僕らが子供の頃、多かれ少なかれ持っていた無邪気であるが故の残酷さをヒロイン「あみ子」が体現しているからで、だからこそ彼女を演じた大沢一菜さんの演技がこの映画の結末の、その全てを引き受けるほどの大きな器でもある映画だと思うのです。

6位「キングメーカー


<選考理由>
国民の声を反映させる為の選挙という「システム」の中で、その「穴」を巧みに利用する頭脳戦の面白さ、そこまでして「勝たせたい」と思わせる魅力的な政治家を体現するソル・ギョングの演技、目的が手段を正当化させた結果の皮肉な顛末など、政治サスペンスとしての面白さだけではない深度を持った傑作です。

5位「メタモルフォーゼの縁側」


<選考理由>
75歳と17歳。偶然出会ってしまった2人の女性が互いに踏み出すはじめの一歩。その尊さを描いた映画です。この映画の批評で「女子高生がメンターに導かれる物語」というものがあったけれど、それは違うんですね。2人は「共に歩む」存在なんです。だからこそ、この2人の関係性はこんなにもキラキラと輝いているのだと思います。チョー好き!

4位「RRR」


<選考理由>
大英帝国支配下にあるインドを舞台に、熱き友情!すれ違い!裏切り!ダンス!アクション!駆け引き!サスペンス!ロマンス!やがて訪れる、絶体絶命の危機また危機!かーらーの、反骨の大逆転劇!と娯楽映画に欲しいものは全てある!まさに、極上の満漢全席映画です。

3位「ペルシャン・レッスン」


<選考理由>
生き延びる為の「嘘」、それを維持する為の「手段」、幾重にも色を変える主人公と大尉の「関係性」。自らが生き延びながらも周囲の人々が次々と死地へと送られる理不尽な場所で主人公が導かれる結末に、ただ震えました。

2位「トップガン マーヴェリック」


<選考理由>
今年もっとも繰り返し映画館で見た映画です。36年の時を経て公開された「トップガン」の続編が、これほどの深みを感じさせてくる大傑作になるとは思いもしなかった。初見で衝撃を受け、何度も何度も映画館に通い、IMAX、4DXと味わい尽くしてなお、また見たくなる。そんな映画でした。

1位「THE FIRST SLAM DUNK

<選考理由>
僕が映画を見にいく理由。それは「見た事ない景色」を見にいく事だったりします。本作は原作者の井上雄彦自らがオリジナルエピソードを交え監督したアニメーション作品ですが、自らの作品世界を「アニメーション」の世界へ落とし込むどころか、アニメーションを使って表現の可能性を「拡張」さえしてみせた。

その結果、アニメーションとしても「未知の領域」へと踏み出したこの映画、見終えてその天才のストイックな凄みと作品が導かれたその高み、ただただシビれました。脱帽です。

映画はまだ進化できる。