2020年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。
みなさま、どうも。ご無沙汰をしております。
今年は大変な年になってしまいました。映画館に「通えない」日々がこれほどつらいのか。それを実感させられました。
つらい状況の中でも映画館はまた僕らのもとへ帰ってきてくれました。そのうれしさのあまり、熱心に通いすぎてしまい、またたくさんの映画に出会いすぎてしまいました。好きな映画をあげればきりがありません。
ブログ更新こそ、すっかりご無沙汰になっていますが。それでも映画を見ることはやめていません。それを伝えたくて、このエントリを書いてます。
というわけで、自分が出会った映画の中から、「良かったな」という映画を10本選ばせてもらいました。「あれがない」「これもない」という方もいらっしゃるでしょうが、ご容赦いただいて、しばしおつきあいくださいませ。
10位「オフィシャル・シークレット」
「オフィシャル・シークレット」。アメリカからのイラク戦争開戦を巡る機密メールを、良心から漏洩した英諜報機関職員の顛末を描く実録イギリス映画。「大統領の陰謀」はメディア側から描いた物語だが、本作はリークした側された側双方の視点から、報道後起こる意外な展開、結末までを見せ切る。傑作。 pic.twitter.com/rFNilPe2Un
— 窓の外 (@madosoto) 2020年9月1日
<選考理由>見終わった後にしばらく考え込んでしまった。「戦争ができる国」とはどういうものかを。もしもそれをまがりなりにもとめようとした女性についての実話であるが、しかし戦争は起こり、英国はそこに関わることになる。もしもそれが「間違ってる」と知りながら、それでも突き進んでしまう。間違ってるなら間違ってると、せめて言い続けねばならないな、とそう思わされた映画でした。
9位「はりぼて」
「はりぼて」。2016年、政務活動費不正受給問題でドミノ辞職した富山市議会。この問題を追い続けていた地方メディア記者2人の視点から、その後の流れを映し出すドキュメンタリー。議会が変わっていくかと思いきや、始まるは疑惑議員の居直り、開き直り。より無責任体質に流れていく、この既視感よ。 pic.twitter.com/HSyQM5dM6p
— 窓の外 (@madosoto) 2020年8月23日
<選考理由>我々の生活と直結する市議会というもの。我々はそもそも追いかけていたろうか。地元テレビ局が富山市議会で起こった不正受給問題を丹念に追った映画だが、ここに見せつけられるのはその「いい加減さ」である。富山だけが特別ひどいだけ、とはどうしても思えない。そしていい加減さは実は市レベルではなくて、実は都道府県、いやさ国レベルにまで引き上げられている。そんな気がして慄然とした映画である。
8位「羅小黒戦記」
「羅小黒戦記」。なるほどコイツは・・・。好きなもの影響受けたものを隠さず吐き出しながら、それらを余さず己の中に取り込み、独自の世界を明快に作り上げ、力強く突きつけて見せるとは。これが新世代の天才というものか。恐るべし。おっさん世代まで射程に入れた全世代対応型アニメ映画の傑作。 pic.twitter.com/34j0winTQA
— 窓の外 (@madosoto) 2020年11月13日
<選考理由>好きなものは好き!というまっすぐな気持ちで突き進みながら自家薬籠中のものとしている点で気持ちよく見てしまった。これが天才の仕事か!というものを久々に見た。こういう才能の出現に立ち会えるのは、素直にうれしいものである。
7位「君の誕生日」
「君の誕生日」。セウォル号事故で長男を喪った家族の元に、海外で働いてた父が帰国。しかし母は会いたがらず、妹は物心ついて初めて会う父に戸惑いつつ、少しずつ懐いていくが。淡々とした演出で喪失と向き合うドラマを描くからこそ名優2人の感情を抑えた演技が効いてくる。それが弾けた瞬間、号泣。 pic.twitter.com/0h4DfexZuL
— 窓の外 (@madosoto) 2020年11月27日
<選考理由>歴史的事故、セウォル号事故を題材にしながら、あえて淡々としたトーンで理不尽な喪失と向き合わざるを得ない家族のドラマを描き出す。それが結果として、国境を問わない、普遍的な「死」と「生」についての物語として立ち上がってくるところ。丁寧な取材と登場人物の感情を丹念にすくい取った演出脚本にくわえ、それを体現する名優2人の演技も素晴らしかった。
6位「ドロステのはてで僕ら」
「ドロステのはてで僕ら」あ、これチョー好き。カメ止めと比較されるけど、むしろ天才・上田誠の集大成をギュッと詰め込んだ!って感じの贅沢で濃密な70分。「サマータイムマシン・ブルース」ミーツ「四畳半神話体系」な「すこしふしぎ」映画の新機軸。詳しい事は言えない映画なので、実際見てとしか。 pic.twitter.com/nWG99B3rZx
— 窓の外 (@madosoto) 2020年7月14日
<選考理由>70分という短さながら、ワンアイデアで物語を広げていって、そして回収して着地してみせた驚くべき映画。しかも「絵」としての面白さも「物語」としての面白さも兼ね備えつつ、誰も見たことのない映画になっている。もうこういう映画、チョー好き。
5位「おらおらでひとりいぐも」
#東京国際映画祭 にて「おらおらでひとりいぐも」。安定の沖田修一節というべきユーモアとペーソス溢れる虚実を交えた軽やかな演出と、ひとりの老人の中にある多彩で深き人生の色彩を映し出した物語で構成された傑作。田中裕子が若くなると「彼女」になるのは、映画史に残る大発見!
— 窓の外 (@madosoto) 2020年11月3日
#おらの感想 pic.twitter.com/O8wZE49dil
<選考理由>ひとりで暮らす75歳の老婆が「寂しさ」たちと向かい合いながら日常を生きる映画なのだけれど、彼女の中にある「豊かさ」が次から次へ湧き出てくる。そのチャーミングさと悲哀、それでもひとり生きることへの「しなやかな覚悟」が横溢する。それを沖田修一監督が見事具現化してみせた。鮮やか!
4位「無垢なる証人」
「無垢なる証人」。ある金持ち老人の死亡事件。自殺と思われた事件は1人の目撃証言から家政婦に殺人の嫌疑が掛かる。彼女を担当することになった弁護士は証人が「自閉症の少女」である事を知る。少女の「世界」に飛び込む弁護士との暖かな交流のドラマと、法廷ミステリを融合させた脚本が白眉の秀作! pic.twitter.com/yRx5ufLq6z
— 窓の外 (@madosoto) 2020年1月25日
<選考理由>自閉症という題材をミステリとして扱う事の難しさを越えて、逆にミステリの中心に据えた、その脚本がとにかく鮮やか。自閉症の少女を演じたキム・ヒョンギの演技も素晴らしく、裁判のために彼女の世界に飛び込む弁護士役に、純愛映画からノワールの悪役もこなすチョン・ウソンを配役したのも効いている。
3位「コリーニ事件」
「コリー二事件」国選弁護人になったドイツの新米弁護士カスパー。彼が弁護する事になったのは彼の恩人を殺した男だった。その男コリー二は事件に対して頑なに沈黙を守っていた。なぜ彼は恩人を殺したのか。真相を追ううちに、国家を揺るがす真実にぶち当たる。観客に法と正義を真正面から問う傑作! pic.twitter.com/1REiA8Vp49
— 窓の外 (@madosoto) 2020年6月17日
<選考理由>ひとつの殺人事件が浮かび上がらせる、ドイツが抱えてきた「負の歴史」、それと向かい合うことの難しさ。「被害者」の視点を、法を作る側が失った時、悲劇はさらなる悲劇を呼んでいくことを描いたミステリ。それは決して我々日本人も他人事じゃあないんだ。見終わったあとそれをずっと考えていた。
2位「ぐらんぶる」
「ぐらんぶる」
— 窓の外 (@madosoto) 2020年8月13日
・・・なんだこれ。
おもしれえ!チョー笑った。くっだらねえ!男達の全裸がやたら出てくるが意味なんかない。ただ理不尽な世界がそこにあり、出会ったが最後、半強制的に巻き込まれていく、大学生2人の悲劇的喜劇。徹頭徹尾頭からっぽにして笑える、英勉監督特大ホームラン。最高。 pic.twitter.com/MtnWqiPAWT
<選考理由>このご時世である。そんな中にあって、劇場で本当に、なにも考えず、ただただ笑っていた。原作を知らなかった事も功を奏したかもしれないが、とにかく劇場にいる間笑い続けていた。それがどんなにありがたい事か。いやーくだらない。最高に大好き。
1位「エクストリーム・ジョブ」
「エクストリーム・ジョブ」。新年一発目にして最高の映画を見た。もう今年のベスト1はこれでいいんじゃないか?←早いわ。娯楽映画に必要なものは全て、最高の形で詰まってる大傑作!この映画を見ないなんてあり得ない。韓国映画にしては上映館数多めなのでお近くの劇場で是非どうぞ!いやー笑った。 pic.twitter.com/QzV1iTCL26
— 窓の外 (@madosoto) 2020年1月5日
<選考理由>今年最初に見た映画で最高の映画にぶちあたった出会いもさることながら、映画館がしばらく閉館するという未曾有の時代にあって、この映画は僕の心を本当に救ってくれた。何回も何回も繰り返し見て、笑った。映画館が閉まっている時に期間限定で有料配信された時は本当にうれしかった。
本当に恩人のような映画である。存在自体に感謝する映画である。
ありがとう。映画。