虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「るろうに剣心/伝説の最期編」

toshi202014-09-21

監督:大友啓史
原作:和月伸宏
脚本:藤井清美/大友啓史
アクション監督:谷垣健治


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 はい。というわけで、「るろうに剣心」完結編です。


 前作のラストで海に落とされた神谷薫(武井咲)を助けようとして、結果海を漂流して浜辺に打ち上げられた緋村剣心佐藤健)を助けた男。その男、かつての師匠・比古清十郎(福山雅治)から再び教えを受けるところから幕を開け、四乃森蒼紫(伊勢谷友介)との決着、そして、志々雄真実軍団との最終決戦へとつながっていくわけですが。
 正直なところを言いますと、脚本の完成度はそれほど高くないんです。ま、前作までもそれほど高いとは言えないんですが、前作がアクションのつるべ打ちで固めてしのいでいた部分が、今回はドラマの比重が高まったことで物語の組み立てのまずさが目立つ感じになった、というべきかしら。


 大友監督によるドラマと谷垣健治氏によるアクションの連結がうまく言ってない、という指摘は前にしましたが、この映画の中で実は実力的には最高である比古清十郎が、剣心をあしらいながら、余裕を見せつける、というアクション自体は大変いいのだが、それと並行してドラマを進ませる荒技は試みとしてうまく行っていない。「戦いながらセリフを言わせる」ってのは漫画でやるのはかっこいいけど、映画だとただ口跡が聞き取りづらいだけだな、という感想しかない。特に福山雅治は役者としてそれほど「口跡がなめらか」というほどの人ではないので、ちょっと「モゴモゴ」っと聞こえる場面が出てくるのが散見されるとそれだけで、軽く冷める。もっと大音声で怒鳴りつけるくらいのキャラで行かないと、あれは格好がつかない。アクションに必死でそれどころじゃないんだろうけど。
 比古とのやりとりの中で見いだした「答え」もあまりに陳腐でちょっと「えー、今更」という感じだし、その割に後半の展開にはまったく生かされてないしねえ、というね。


 そして四乃森蒼紫は本作に限って言えば、「残念なイケメン」枠確定の残念ぶりで、前作で剣心と戦うために追い続けて日本中をあっちにうろうろ、こっちにうろうろすれ違いまくった挙げ句、師匠を殺しかけ、慕っていた巻町操(土屋太鳳)ちゃんからは嫌われ、ようやく見つけた剣心は比古清十郎との修行でパワーアップしていてぼっこぼこ、最後には操ちゃんに許されて号泣、ってお前そんなんでいいのか、という。


 クライマックスへと至る中盤まで、まったくノレないで見てる自分がいて、それはなぜかというと、結局前作でも突っ込んでしまった「軍隊あるんだから使って潰せばいいじゃんか。」という部分でね。
 この初動の時点で「警察と剣心だけで内々に解決しようとした」過ちの結果が描かれるのであるが、一言で言えば政府の「大失態」ですよ、こんなもん。だって、浦賀沖まで戦艦で攻め込まれて、国土を砲撃され、政府主要閣僚である伊藤博文がわざわざテロリストに会いに行った挙げ句、脅しに屈する形で剣心を指名手配する、という流れを見て、「だ・か・ら言ったじゃんか!」としか思えない自分がいるんですよね。バッカじゃねえの。という。


 で、結果剣心捕まって刑場に引きずり出され、すわ、このまま処刑されてしまうのか、というあの茶番はね、本当に寒々しくって見てられなかったんですが。



 それでも志々雄の有する戦艦に入ってからのくだりはさすがに面白かったですね。前作で剣心が敗北した瀬田宗次郎(神木隆之介)との対決は体技で徐々に剣心が圧倒し、宗次郎を手玉に取って彼の笑顔の裏に隠された「本性」を引き出す、という流れは、神木くんの熱演も功を奏してうまくいってたと思うし、志々雄真実の「ラスボス」ぶりも尋常じゃなくてよかったです。緋村剣心斉藤一江口洋介)、四乃森蒼紫、おまけで相楽左之介(青木崇高)←おまけ言うな、4人がかりに渡り合うという泥臭い戦いは、とても香港映画らしくて好きな展開です。コメディリリーフとして1人気を吐く左之介が出てきた時、志々雄が左之介をぶん投げながらの「だれだ、お前!!」と絶叫した場面は大爆笑でした。見せ方がうまくないのか、こういうギャグがあまり観客に伝わらず、笑ってるのは俺だけでしたが。
 志々雄の死に様もまさに大悪党のクズらしい死に方で、さすがクズな役をやらせたら当代随一の藤原竜也の面目躍如と言ったところでしょうか。


 これでアクションと物語がもっと密接に絡み合っていたらこのシリーズも「傑作」だったのでしょうが、その見せ方、語り方はまだまだ道半ばという感じはします。日本の俳優達もやればアクション出来るじゃん、ということを証明した谷垣健治氏の評価は本作で大分高まったでしょうから、彼の才能を生かした作品がばんばん日本で作られる流れになるといいな、と思いました。(★★★)