虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「悪魔は誰だ」

toshi202014-09-16

原題:Montage
監督・脚本:チョン・グンソ


 ある場所に、ある日、一輪、花が置かれていた。


 それがすべての始まりである。


 15年前に起こった少女誘拐殺人事件は、まもなく時効を迎えようとしていた。少女が死んだ現場に居合わせ、長年捜査に携わってきた担当刑事は、被害者遺族の母親に時効が訪れることを伝えに行く。残りあと5日。母親は母親で独自に情報をかき集め、捜査に協力してきた。だが、捜査は遅々として進まぬまま、暗礁に乗り上げていた。
 刑事はふと事件現場を訪れる。そこには一輪、白い花が供えられていた。
 それは現場に居合わせた刑事、警察関係者、母親、そして「真犯人」しか知り得ないことであった。
 あと。5日。刑事は猛然と動き出した。犯人。犯人が残した唯一の「新たなる証拠」!そこへと向かうには車しかない。犯人の車を特定し、盗難車と判明。さらにそこへと向かう道筋をたどり、ついに犯人を視界に捕らえるところまで成功する。だが、すんでのところで取り逃がし、公訴時効は成立してしまうのだった。
 刑事はそのまま警察を去った。



 ところが。終わったはずの事件は再び動き始めた。
 時効成立後、15年前の少女誘拐事件をそのままの手法を踏襲する誘拐事件が発生する。手口も金銭授受の方法も、まったく同じ。警察はその事に気づき、担当刑事と接触。同じ人間の犯行だと直感した刑事は、同じ結果にはさせない!と、ふたたび捜査現場に帰ってきていた。
 一方、かつての被害者遺族の母親も、時効成立後も真犯人を追うべく、刑事が犯人を追い詰めた際に残した「証拠」を元に、恐るべき執念で独自に事件の真相を追い続けていた。


 真犯人は誰なのか。そして、刑事は、母親は、かつての悲劇が再び起こることを止めることは出来るのであろうか。




 という、時効を巡るサスペンスなのだけれど、新機軸なのは、時効成立後の話が焦点になっているというところである。そして、物語としては韓国というお国柄が非常に良く出ている映画なのです。アクセルベタ踏みで犯人を追い詰める、その激情たるや、尋常ではない熱量です。昨今の日本映画だとなかなかこうは行かない。
 この映画が最後に見せる真実、そして「人が「悪魔」になるのはなんのためか」という、非常に根深い問題も扱っている映画なのです。「少女誘拐」という卑劣な犯罪、さらには死に至らしめてなお、15年も罪に服すことなく逃げ回る人間とはどのようなものか。
 そして、この映画は、被害者の遺族にとって、時効が訪れたとしても、事件は決して終わらないものであり、被害者遺族の母親の執念が、この映画を思わぬ結末へと導いていくのであります。


 そういう意味では、近年スタイリッシュになりつつある韓国映画にあって、非常にエモーショナルで泥臭い一昔前の韓国映画らしくもあると思うのですが、これを撮ったのが新人監督だというので、このような泥臭いメンタリティは世代を超えるのだなあ、とちょっとしみじみ致しました。
 とはいえ、原題の「モンタージュ」の名の通り、ちょっとトリッキーな手法で事件の全貌を描き出した脚本がこの映画の妙味であり、なかなか新しい才能が絶え間なく出てくるなあ、とここ最近の韓国映画には感心しきりであります。(★★★★)


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