「相棒 -劇場版- 絶体絶命! 42.195km 東京ビッグシティマラソン」
ドラマ版は未見。うん。面白かった。
元のドラマを知らないせいか、まず設定に心奪われた。警察庁内の「島流し部署」としての「特命係」があり、それが「警視庁」組織内にありながら決してそれに縛られることがなく小回りが利く「探偵事務所」的存在になっている、という設定がうまい。警察としての信用(ブランド)を持った、「探偵もの」なのね。面白い。予告を見る限りではてっきり「安楽椅子探偵」かと思っていた、水谷豊演じる右京さんが実は結構アクティブなキャラ、というのも嬉しい驚きだった。
この映画は楽しかった。結局、脚本ではなくキャラクターとスピード感が良いので、俺にはこのスピード感が合っていた。テレ朝刑事ドラマの遺伝子を受け継ぎながら、現代的な犯罪を違和感なくスピーディに放り込む手際、そして無理矢理にも見える右京さんの謎解きを演出で「アリ」にする力強さがあって、ノッて見られた。
SNSを介した連続殺人、チェスを使った謎解き、という「アリエナイ」犯罪な上、副題の「東京ビッグシティマラソン」を舞台にした劇場型犯罪につなげるときの「無理矢理」感。そして真犯人が発覚してさらにずっこける、という展開ではある。物語の結末も、大山鳴動してなんとやら、という感じがあるし、さらに犯人像があきらかに最初の連続殺人のそれとは乖離しすぎていて、「おいおいおい」とは思った。大体、真犯人の状態を考えたら、ここまで無理矢理名大がかりな犯罪を仕掛ける意図がよくわからないしなあ。結局ああいう行動に出るのなら、「それだけ」で良かったんでは・・・という気もする。
しかし、それらの瑕瑾は承知の上で、それでも楽しかったのは、人物の配置が綿密で登場人物にも厚みを感じさせるから。展開のスピード感を重視しているのは大正解で、娯楽映画としては退屈しない。ドラマ版の一部のファンにはそういう「脚本の瑕瑾を演出で誤魔化す手法」が不評らしいけど、俺にはむしろこのくらいの荒唐無稽さこそが「映画」的だと思ったし、面白かった。この映画の「キビキビ感」こそ、「踊る大捜査線」映画版に圧倒的に足りなかったところであるしなあ。
むしろ自分にとってネックだったのはドラマ版の定番(らしい)泣かせの場面で、ここまで順調に転がっていた映画が、見事に停滞するので、「ああ・・・」と思ってしまった。泣かせはいらんから、スパッと終わらせてほしかったし、このストーリーのキイとなるSファイルもマクガフィンで終わらせた方が政治の「伏魔殿」的な感じが出るんではないか、と思ってしまった。しかし、堂々たる「映画」っぷりは予想外で、興業も順調のようだから、是非次回作でさらなるリベンジを期待したい。(★★★)