映画館でしんのすけとじゃれあっているうちにぎっくり腰をしてしまい、みさえから「役立たず」扱いされた野原ひろしは、整骨院も休みで腰を治すこともできず、近所の公園で自分の無力さにうちひしがれる。そんな時、怪しいひとりの老人がひろしに目をつける。巨乳のおねえさんからメンズエステの勧誘を受けたひろしはほいほい引き受けてしまい、エステですっかり元気を取り戻して、意気揚々と家に帰ってきたひろしは、自分の身体がロボットになっていることに気づいてしまうのであった。機械の身体になってしまった、野原ひろしの運命や如何に。べべべん。
結構久々に「クレしん」映画を映画館に見に行った。いつ以来だろう、って考えると「嵐を呼ぶオラの花嫁」以来だから、4年ぶりか。なんだかんだでご無沙汰なのであるが、では、なぜ見に行ったか。理由は簡単。脚本が中島かずき氏だからである。
以前中島かずき氏が2008年に脚本を担当した「隠し砦の三悪人」のリメイク「隠し砦の三悪人/THE LAST PRINCESS」の感想でこんなことを書いた。
問題点があるとするならば、アクション演出の部分が監督の理想からするともうひとつ届いてない感じがあるのではないか、と思うんですよね。見ていて「ああ!ここがアニメーションだったら映えるのになあ!」と思うシーンが随所にあって、むしろアニメーションだったなら全然アリな演出の部分が実写に置き換わると途端に、見ているこちら側が「リアリティの部分をさっ引いて」見なければならず、ちょっと苦しい、という部分が散見される。
アニメならノレる部分が実写に置き換わると少々苦しい、というのは、むしろ「マトリックス」シリーズが抱えていた問題と非常に似通っている気がする。本作が一部で不評なのは、この「リアリティを多少さっぴいて見なければついていけない」部分なのではないか、と思うのですよ。俺はそういうの苦にならないんだけど、そこを問題にする人は多いからね。というわけで、結論としては、是非ともガイナックスあたりに、アニメーションでこの映画をリメイクしてほしい、ということです。
敵中突破 愚連集団 - 虚馬ダイアリー
そんなわけで、劇団☆新感線の座付作家でもある中島かずき氏の、本領が発揮されるメディアは「アニメ」にこそあると、僕自身は思っていたわけですが、そこにきてね、中島氏が脚本・シリーズ構成を担当したテレビアニメ「天元突破グレンラガン」の劇場版というものが2009年に公開されたわけです。言ってみれば総集編なんですけど、それをね、なにも期待せずに見に行って。んまー感動するわけです。
本当に映画館で見て良かったと思いました。テレビアニメ版ももちろん素晴らしいんですけど、劇場版に再編集して新規カットバンバン投入した「天元突破グレンラガン/螺巌篇」はね、とにかく素晴らしかった。テレビ版以上にクライマックスがアゲてアゲてアゲまくる展開で、脳内から変な物質がいっぱい出たくらい感動したんですよね。俺にとっては「パシフィック・リム」でも体験出来なかったくらいのやつですよ。
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だもんで、「アニメ」で「映画」で「脚本:中島かずき」。これならばほぼ間違いはないだろうと重い腰を上げたわけです。
結果。ボロ泣き。
本当にね、こんなに面白くて、そして切ない話になろうとはね。
元々、一時期「クレヨンしんちゃん」シリーズのチーフプロデューサーを務めていただけあって、キャラクターの把握も完璧でありながら、いままでのクレヨンしんちゃんにはない切り口で攻めていっている感じがいい。サブタイトルに「ロボとーちゃん」と付くだけあって、シリーズで「オトナ帝国」ぐらいに「野原ひろし」が作品の根幹に根付いたストーリーであり、父親の悲哀とルサンチマンが物語の原動力でありながら、そんな「負」の部分を「ロボットになった野原ひろし」が突破していくストーリーはまさにアイデアとして素晴らしい。
ロボであることの強さ。ロボであることの楽しさ。ロボでしかない哀しみ。
そのドラマツルギーを中島かずきの筆力がさらなる高みへ押し上げる。
そして、「ロボとーちゃん」に秘められた真実が明らかになった時、野原一家の絆が試される!「映画クレヨンしんちゃん」シリーズの新たな代表作になることは間違いない快作でした。そろそろ公開終了も間近だと思うので、お早めにどうぞ。大好き。(★★★★)
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