虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「劇場版天元突破グレンラガン」

toshi202009-06-22

監督:今石洋之
原作:GAINAX中島かずき
脚本:中島かずき


 2007年に放送されたGAINAX製作のテレビアニメ「天元突破グレンラガン」を劇場用アニメに再編集、新作カットを追加した作品。


 ・・・・ということで、この作品の存在を知ったときの印象はあまりいいものではなかった。テレビアニメ版はきっちり全話見たし、好きな作品なんだけど、どうにもこう、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の新作までのつなぎに体よく再編集してたんでしょ、という思いが心の片隅にあって、そういうものをなかなか見に行く心持ちになれずにいたのだけれど、「エヴァ」の公開も近づいてきて、聞こえてくる評判も悪くないこともあって、レンタルDVDで「紅蓮篇」を見てみた。
 で。割と「思った通り」のテレビアニメの再編集に新作カットがいくつかついたくらいのものだったのだけれど、脇役のドラマをバッサリ切って、主役格のカミナとシモン(+ヨーコ)の絆に焦点を当てた構成と、映画らしいオリジナルのクライマックスをきっちり行っていたのが目を引き、それなりに楽しめてしまったので、「ついでだし」ということで、池袋で公開中の「螺巌篇」を見に行ったわけです。
 「紅蓮篇」は(★★★)。


 でね。「螺巌篇」ですが。


 ★★★★★。大好き。超好き。
 ただし、テレビ版を見てない人は★1個減で。テレビアニメで劇場版の脇のドラマ部分を、劇場版でテレビ版のクライマックスを、それぞれ相互補完する内容になっているので、両方見ておくとより楽しめること確実。テレビ版を見た人も見てない人も、とりあえず劇場で見ておいた方がいいデスよこれ。


 なんか「エヴァ」の前座扱いして大変申し訳ない。すげえよかった。見ている途中で尿意をもよおしてどうしようかと思ってたんだけど、見ている間に体から興奮で汗が噴出、最後には涙がだらだらで、気がついたら尿意が完全に引っ込んでた。そのくらい楽しかった。


 「螺巌篇」ではテッペリン攻略戦の部分を端折り、いきなりロージェノムとの決戦から幕を開けて、「紅蓮篇」終盤から登場したニアとシモンの関係が、そのまま「人間(螺旋族=シモン)VSアンチスパイラル(反螺旋族=ニア)」の、「宇宙」をめぐる戦いの中にあるドラマを描く。テレビアニメではそれなりの尺をとっていたロシウ一派とシモンや大グレン団の仲間達のすれ違いや、戦いの幕間における脇役達のドラマなども、かなりわかりやすく整理されていて、本筋以外のドラマ自体を軽く流している。つまり、より「中島かずき」作品の特色である、「運命の女のために男が闘う」という図式がより明快になっている。
 その上で、映画の眼目としては、ドラマ部分に費やす時間を必要最低限に抑えつつ、どこまで、理想のクライマックスを描けるか、という目論見があり、そこから描かれるインフレ展開に次ぐインフレ展開を抜群の演出で畳みかける!


 テレビアニメ版はかなり緩急をつけた演出と、自己犠牲や「精神」描写でフックを作り最後に大逆転・・・という展開を繰り返し、というようなウツとソウの繰り返しのようなドラマ作りをしていたが、劇場版はとにかくドラマ部分から戦闘シーンまで新カットに次ぐ新カットを挿入し、アゲてアゲてアゲていく。叫び、タンカを切り、殴り合う。自己犠牲はキタン一人に任せ*1、大グレン団のメンバーはほぼ温存でとにかく総力戦に次ぐ総力戦。
 新ガンメンも続々登場、朝時間帯という表現の制約すら脱ぎ捨てて、女性キャラもかなりサービス満点な描写もアリ!ととにかく、ストーリー自体はほとんど変わらないにも関わらず、明快になったドラマと立て続けに続くクライマックスがガッチリと螺旋を描き、見ている者の心にドリルの穴をこじ開ける。
 気弱な少年・穴掘りシモンが、宇宙の支配者にケンカを売り、撃破するまでの二部作の上映時間わずか4時間強!この体験は是非劇場で!


 出来れば、まずテレビアニメ、次に「紅蓮篇」DVDを見て、最後に劇場で「螺巌篇」を見るのがいいんですよ!この順番が一番楽しい!絶対見て!見た方が絶対幸せになるから!

 ・・・・すいませんでした。でも「螺巌篇」は是非劇場で見て欲しい。(★★★★★)

*1:彼が死なないとヨーコが彼のモノになってしまうので・・・。ヨーコは永遠にカミナのものだ!<偏見