虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「青の祓魔師 ―劇場版―」

監督:高橋敦史
原作:加藤和恵
脚本:吉田玲子




 面白かった。


 テレビアニメ版は「MEMORIES」の「最臭兵器」や、「劇場版アニメ侮れない」と目を見開かれた「劇場版NARUTO」の第1作「大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!」などを手がけた岡村天斎監督が関わっていたので時折見ていて、劇場版が公開されると聞いたときは久しぶりに岡村天斎監督の劇場用アニメが見られる!、と思っていたら監督が交代していて正直落胆していたのだが、実際見てみたらなかなかどうして。
 高橋監督は「千と千尋の神隠し」で監督助手を務めた後、「はじめの一歩」「茄子」シリーズ「MONSTER」などで演出を手がけるなど順調にキャリアを積んできた人らしく、非常に力の入った出来映えになっている。


 映画の舞台は同じ「正十字学園」なんだけど、11年に一度の祭りの時期で迎えて街ははなやいでいて、その背景美術が非常に眼福。
 そんな街が華やぐ中で悪魔の進入に備える、「悪魔を倒すプロフェッショナル」祓魔師たちと、人員が少ない中で「幽霊列車」退治にかり出された、主人公の奥村兄弟とクラスメートのしえみは、退治する過程でひとりの幼い悪魔と出会う。悪魔と人間の子供である兄・燐は、監視役としてその悪魔を部屋で監視する役目を引き受ける羽目になるのだが、燐と悪魔は少しずつ打ち解けていき、やがて燐は悪魔を「うさまろ」と名付け、友情をはぐくむようになる。


 この「うさまろ」たんが非常に可愛い。はじめは燐に心を開かず反抗的なのだけれど、燐の優しさに触れるうちに燐になつくようになる姿がもうたまらん。しかも声をあててるのが釘宮理恵なので、可愛さ倍増で悶絶しそうになる。そんな燐と「うさまろ」の日常描写が続くのだが、見ていて飽きない。しかし、「うさまろ」はあくまでも・・・「悪魔」である。
 主人公の燐は自分の出自により、様々なトラウマを抱えていて、それはテレビアニメ本編で描かれているのだが、彼の生来の性格からそれは日常生活に現れることはない。しかし、うさまろはそんな人間が「忘れたい」と願ってしまう「イヤな記憶」を「喰う」悪魔であった。


 人は「いい記憶」を持っていればみんな幸せなのか。宿題、仕事、過去のトラウマ、日常の煩わしい事。それらすべてを忘れて生きられれば、人は幸せになるのだろうか。そんな主題へと物語はシフトしていく。
 忘れていくことはいずれ出来る。人はその「能力」があらばこそ、生きていける。しかし、そのトラウマを抱えてもやらなければならないことがあるのが、奥村燐という少年である。人間と悪魔の間に生まれたゆえか悪魔とも人間との区別なく接する燐という少年と、「うさまろ」と名付けられた悪魔の奇妙な友情譚として物語はひとつの結末を迎える。


 ややクライマックスが無理矢理見せ場をつくった感じで唐突感はあるものの、アニメートの魅力で押し切ってみせるあたり、高橋監督の手腕、なかなかのもの。主題と作品との相性もばっちりで、なかなかに胸に迫る秀作でした。(★★★★)