監督・脚本:福田雄一
ナゾの男チャールズ(佐藤二朗)に、名前に色が付いているというだけで集められた、建設会社のOL・赤木直子(桐谷美玲)、アパレルショップのバイト・青田美佳(藤田美菜)、貧乏でバイト掛け持ちしている黄川田ゆり(高畑充希)、女優志望の劇団員・緑山かのこ(有村架純)、財閥のお嬢様・紺野 すみれ(山本美月)の5人の「女子」たちは、無理矢理、地球を守るために怪人と戦う戦隊「女子ーズ」を組まされることになった。
彼女たちには、5人集まると出せる強力な必殺技があるのだが、1ヶ月も経つと様々な理由から集まりが悪くなり、怪人との戦闘に支障を来すようになるのであった。まあ、大変。って話。
【関連】
『薔薇色のブー子』 「こんなもんでいいんだよ、視聴者はどうせ馬鹿なんだから!」・・・これを日本映画の退廃と言わずしてなんと言えばいいのか
最近、柳下毅一郎氏から「日本映画の知的退廃の象徴」とまで言われるようになってしまった福田雄一監督の新作である。当然この「女子ーズ」も同じサイトでぼろくそに叩かれているわけであるが、俺はそもそも福田雄一監督が嫌いではない。この「女子ーズ」もとりあえず普通に好きである。
映画の作りとしては佐藤二朗演じる長官・チャールズの1人しゃべりパートを見てもわかるけど、テレビドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズで完成されたテンプレートをそのまんま、「女子だらけの戦隊もの」に置き換えた脚本構成で、「いつでも深夜ドラマに出来ます」感ばりばりのユルさなのだが。
ただね。僕はひとつ。福田雄一監督を信頼していることがある。彼はこの作品で「この映画を作りたいから作った」に違いないと思ったのである。それは「協調性のない女子だらけの戦隊もの」は一種の「言い訳」でやりたかったのは「チャーリーズ・エンジェル」であろう、ということだ。だって長官の名前、「チャールズ」だもんねえ。わかりやすく。
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無論福田雄一監督の描く「女子」はかわいげがない自分勝手なキャラが多く、「チャーリーズ・エンジェル」そのものになどなり得るはずもないのだが、それでも、コンセプトとしては非常に近い。戦うときも顔出ししている理由も、「戦っているときも女子の可愛い顔を出しておきたい」という以外に理由が見つからないし、チャールズに説教されてふてくされたり、反抗したり、戦う場面よりも、彼女たちの生活やら、仲間を集めるためにひたすら移動する姿に費やすというのも、個人的には「これはこれでいいじゃない」と思ったりする。当代きっての可愛い若手女優たちがひたすら出ずっぱりで、やいのやいのやってる姿はそれだけで和む。
福田雄一監督が優れているのは、「作りたい」と思った企画をどうにかこうにか成立させてしまう、その実行力にある。彼を初めて知ったのが、この映画のコスチュームデザインを担当している、熱血をカリカチュアする笑いに転化した先駆けの漫画家・島本和彦先生の「逆境ナイン」映画版の脚本である。
彼が関わった原作アリの作品は「逆境ナイン」「変態仮面」「俺はまだ本気出してないだけ」など、いずれもちょっと普通のメジャーな映画会社ならおいそれとは手を出さないタイプの漫画を率先して映画化している。僕はこの実行力はちょっとすごいと思うし、そのセレクトも「信頼できる」感じなのである。そして、7月からは島本和彦先生の「アオイホノオ」のドラマ化も担当する。
この映画は決して「志の高い」映画ではないし、ハナっから「ハリウッド大作」などと競合する気もない。ただ福田雄一という人は、作りたい映画をひたすら作っているだけである。「勇者ヨシヒコ」が「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」と競合する気などハナからないように、「女子ーズ」も別に、ここ最近のハリウッドアメコミ大作などと競合する作品にしたいなどと思ってもいない。
「薔薇色のブー子」のようにヨソからの企画も引き受けつつ、自分の出来る範囲で、自分のやりたいことを映画にする。福田雄一監督は「予算の少ない日本映画界」に咲いたあだ花ではあっても、決して「知的退廃」の象徴なんて大げさなもんではない。志が高いとは思わないが、彼は真っ正直に映画やドラマを作ってると思うのである。(★★★)
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