「パリ猫ディノの夜」
原題:Une vie de chat
監督:アラン・ガニョル/ジャン=ルー・フェリシオリ
脚本:アラン・ガニョル
フランス製のアニメーション作品。あんまり前知識を入れずに見に行ったんだけど、楽しかったねえ。
海外のアニメとかでいいな、と思うのは「1枚絵」として見たときに「・・・あれ?」と思うようなキャラクターであったとしても、動きできちんと演技とキャラクターをきちんとつければ、そこに魅力が付与されることを知っている作り手が多い気がするんだよね。
日本のアニメって、漫画文化と切っても切れない関係性があるから、一枚絵として「可愛い!」とか「かっこいい!」とかがきちんとわかるというか、ある程度整ったところの記号性のある「キャラデザイン」を作ってから動きをつけていく、というのがあると思うんだけど、本作に限って言えば、一切ないね。
たとえば主人公の猫にしたって、その飼い主である、ちょっとトラウマを抱えてしゃべれなくなった女の子にしたってが、一枚絵で見ると、まあ、そこまで可愛くはないんですよ。その娘のお母さん(夫の仇を追う現職刑事)にしたって、彼女、多分映画の世界の中では「そこそこの美人」くらいの描かれ方だと思うんですよ。でも、映画に初めて登場した時なんて、「福笑い失敗した」ような「ヘタウマ」感というか、「えー?」という顔をしてるの。
だけど、アニメーションとして動き出すとまったく気にならなくなるのね。日本のアニメーションで言うと、どうしても「クレヨンしんちゃん」を思い出すのよね。臼井儀人という「ちょっと崩れたデフォルメ」のキャラを描く漫画家さんの絵を、アニメーションとしてきちんと動かす、みたいな感じに見えるので、てっきり「わざとクズしてるのかな?」と思ってたんだけど、やっぱりそうじゃないんだろうな、と思い直したりした。多分、「これでいいんだ」と割り切ってるんじゃないか、と思うんですよね。
話としては昼間は「お父さんを亡くしてしゃべれなくなった女の子の飼い猫」であるディノが、夜は女の子も知らない、別の顔を持っていて、やがてその行動を突き止めようとした女の子が、「お父さんを殺した首謀者」と「その仲間」を見てしまうことから、話はあらぬ方向へと転がり出す。
スラップスティックなコメディなども交えつつ、悪漢たちに狙われる少女のために、ディノと夜の「相棒」が悪漢と追いかけっこを始めることになる。
女の子が「しゃべれない」こと、ディノの「相棒」が人にはおおっぴらには言えない職業であることから、刑事の母親とのやりとりの中で、行き違いによるサスペンスが発生することがしばしばあって、それがなんかドリフのコントのような形で、「ああ!そうじゃないよ!そうじゃないよ!」と声に出しちゃいそうなシリアス場面がちょいちょいあるのが楽しいですね。。まるで「志村!うしろ!うしろ!」的な。
・・・ドリフ的なお笑い表現って、世代も国境も越えるな、と思いましたねえ。ドリフの笑いってサスペンスにも応用が利くんだな・・・とか。
子供向け的なお笑いを交えつつ、「夜の追跡劇」というアダルトな雰囲気を醸し出すバランスも絶妙で、その辺も「クレヨンしんちゃん」に印象が近くなる感じなのかな、と思いました。面白かったです。(★★★☆)