虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「SHORT PEACE」

toshi202013-07-24



MEMORIES [Blu-ray]

MEMORIES [Blu-ray]


 大友克洋監督の新作短編「火要鎮」を中心に、気鋭のアニメーション監督たちの短編が見られるオムニバス。大友克洋監督関連で思い起こさせるオムニバスというと「MEMORIES」で、あれは本当に「オムニバス」としては非常にバラエティに富みながらも、まとまりも感じさせるぜいたくな企画であった。
 では。本作はどうか、というと。


 その前に、各作品の雑感。

「九十九」(森田修平)


 一人の男が雨宿りに立ち寄った山小屋で、謎の怪異に遭遇し、その怪異を鎮めるお話。
 まずまず。CG作品としての演出はなかなか悪くはないし、かつての和製CGアニメーション黎明期を知るものとしては「よくぞここまで来たな」くらいには思うのだが、いかんせん話が「もったいないお化け」を鎮める「にほん昔ばなし」なので、こころにさざ波が起こらない。良くも悪くも「優等生」な感じで、欲を言えば、もっと「攻めた」話にはならなかったのだろうかと思ってしまうのでした。(★★★)

火要鎮」(大友克洋


 ざっくり言ってしまえば「八百屋お七」な娘と「火事息子」な青年の叶わぬ恋とその顛末を描いたお話。
 
 絵巻物風に始まる、「幼なじみ同士の淡い恋」が描かれる序盤。娘が親同士が決めた結婚を前に、火事道楽が過ぎて火消しになった青年との叶わぬ恋を諦めきれない。悲嘆に暮れる娘は、ふとしたきっかけで起こった小火を、「あえて」放置したが故に大火になってしまう。
 淡い恋と、その恋ゆえに思いあまって火事を起こす辺りは、フェティズムを感じないせいか、特に入り込むことなく見ていたが、一転、大火に至ってからの後半部は、格段に演出の強度があがる辺りが、さすが「大破壊」作家・大友克洋の面目躍如。
 少女が望んだ「思い人」との再会は果たされるものの、大友克洋渾身の「大火」がその恋をあっさりと吹き消してしまう辺りが、やや肩すかしではある。「え?これで終わり?」みたいな。悲恋ものならば、もっと演出に艶があってもよかろうになあ、と思ってしまう。大友監督、ドライすぎである。(★★★☆)

「GAMBO」(安藤裕章


 時は戦国。鬼に捧げられることになった村でただ一人残った少女のために、言葉を解する謎の熊が立ち上がるお話。
 脚本・石井克人、キャラクターデザインに貞本義行、というスタッフをそろえた手描きアニメーション時代劇なのであるが、今ひとつ乗らなかった。全体的にイメージが凡庸で、少女を救う熊の造形がまんまシロクマなので、「森の中にシロクマがいて、つおくて醜悪で非道な赤鬼と戦うアニメ」というだけでは、どうにもこう・・・。(★★☆)

武器よさらば」(カトキハジメ


 廃墟と化した近未来の東京で、5人の小隊が無人戦闘兵器と遭遇。その戦いを描く。その果てに待つ意外な結末とは。ってお話。
 大友克洋の読み切りが原作であり、ちょっと懐かしい大友系「劇画」系テイストを残しつつ、渾身の戦闘描写で見せる。実は話としては、4作の中で一番好きな作品ではあるのだが、オムニバスの大トリに持ってくるには、オチがあまりにあんまりではある。(★★★)



 とまあ、4作品で約1時間半くらいなのであるが、やはり「MEMORIES」の、「ぜいたくなものを見た」というところには至っていない印象。個々の作品は悪くないが、いかんせんオムニバスとしてのまとまりに欠けるせいか、全体的に小粒な印象になってしまった感じがする。本来なら大友監督の作品をトリに持ってくるべきなんでしょうが、わりとあっさりとした終わり方なので、あの位置でも仕方ないですかね。


 あ、森本晃司監督のオープニングアニメーションは、大変素晴らしかったです。