虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「Genius Party Beyond/ジーニアス・パーティ ビヨンド」

toshi202008-10-25




ジーニアス・パーティ」感想
http://d.hatena.ne.jp/toshi20/20070719#p1


 劇場公開としては第3弾?これまでスタジオ4℃の短編まつりに付き合ってきたが、ようやく、金払って満足できるレベルに到達してきた。アート系色が強かった前回に比べて、より娯楽作品集の色が濃いので、アート系嫌いな人も安心だ!俺とか!
 いよいよ「ジーニアス・パーティ」に名前負けしないレベルに来た感があります。前作はあまりのことに思わず感想が「説教モード」に入ってしまいましたが、今回は見終わって素直に「楽しかった」と思いました。以下各作品雑感で。


・「-GALA-」(前田真宏


 前田真宏監督という人の印象は、一言で言えば「優等生」アニメ監督だったのだけど、今回もその域から大きくはみ出た感じはない。作画は申し分ない。画的にも厚みがある。だけど、なにか物足りない。
 方向性として貞本キャラでは宮崎駿リスペクト(もののけ姫千と千尋あたり)&オリエンタルなオーケストラというイメージでを具現化した感じで、祭りの開幕を告げる短編のアプローチとしては決して悪くないし、キッチリとした商品としては申し分ないのだが、なんていうんだろう、見ていて「魂」が興奮する、という域には達しない。この辺が、本当に惜しいところで、もっともっと高く飛べるはず・・・と思う。(★★★)


・「Moon Drive」(中澤一登

 彼の今までの作品はどちらかというと端正でクールという印象だった分、誰の作品だかわかんなかった。そのくらい、はっちゃけたギャグコメディ。デフォルメされたキャラと、「モンキー・パンチ」的なアンモラルなセンスを融合しつつテンポよく切っていく手際はさすがと言える。「ベルヴィル・ランデブー」からの影響が色濃い作品で、ラフ画に寒色を配したような絵柄は新鮮で、オノマトペを実験的に使用するあたり「漫画のネーム」感も入ってくる。でありながら画的にはしっかり凝っているというそのさじ加減はうまい。
 物語のまとまりのなさも含めて、「習作」の感はあるが(これ、前にも書いた気がするが)、それをうまく「画」として(推敲中の話)として提出している辺りぐうの音もでない(笑)。その実験的センスをうまく、作品として昇華させたセンスに免じて★追加。ていうか習作はもういいので、いい加減、「キル・ビル」で垣間見せた本気の「中澤節」を見せて欲しい。(★★★★)


・「わんわ」(大平晋也

 フリーで縦横無尽に活躍するアニメーター・大平晋也監督のデビュー作(だよね?)は、子供が迷い込んだ夢の話。子供の原体験と妄想をランダムに組み合わせたような世界観を、湯浅政明をさらにラフにしたような作画で押し切ろうとした意欲作なんだが・・・なんだろう、「うわ、とんでもないものを見た」感は思いの外希薄なのは、凡人ですらある程度考えつくような「記号」を組み合わせただけのように見えるからか。退屈はしないのだけれど、絵柄が独創的なわりには「まとまっちゃってる」感じがあって、新しさは感じなかったりする。画をクズしてそれをうまくアニメにしたアニメーターとしてのセンスはさすがだと思うけれど、アニメ監督としてはまだ「凡庸」の感は否めない。作画がすごいのはわかったので、その先の想像力が見たい。(★★★)


・「陶人キット」(田中達之*1


 うおっ!と思うほど、大友克洋森本晃司からの影響が色濃い作風をかなり高いレベルで自分のものにしていて驚く。病んだ目をした少女の奇妙な日常に、ある日「介入」してくる男が現れる、というストーリーなのだけど、話的にはこちらの想像を大きく超えないのはやや物足りない。だがそれでもなお、キャラクターの一挙手一投足で見せていく本格的なアニメーションを作るという一点において、この作品はいままでの短編作品たちの中でも群を抜いている。作画面での充実はさすがで、そこを一点突破した作品とも言える。監督の「これから」を期待しての★追加。(★★★★)


「次元爆弾」(森本晃司


 森本晃司のイマジネーションをすり抜けていく、イメージ・クリップ集。作画的には非常にリッチな作品なのだが、ストーリーがほとんどあってないようなものなので、正直「ああ、そう来ちゃったかあ」と思いながら見てた。作画的には「うわ、これすげえ!」と思わせる辺りはさすが「Genius Party」という名の宴のトリを飾るにふさわしい「Genius」っぷりなのだが、いかんせんここまで本気でイメージクリップされちゃうと、正直やや退屈な場面も出てくる。個人的にはもっと違うアプローチで勝負した森本晃司が見たかった(★★★)

*1:どっかで見たことある絵柄だと思ったら、「リンダキューブ」のキャラデザやってた人か。へーへー。