「マリー・アントワネット」
原題:Marie Antoinette
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
http://www.ma-movie.jp/
日本では池田理代子の「ベルばら」で馴染みが深いマリー・アントワネットの半生についての映画。見る前にそれだけ知ってたのだけれど。
なんかね、この映画、見ていて常にこう、胸がざわつく映画なのだよな。
いや、歴史をきちんとなぞっている序盤はね、そんなに心配はしてなかったんだけれども、話が進むほどに不安になってきちゃって。ええかあ。ええのんかあ、という。
不安というか、心に雲がかかってくるような「ざわ・・・っ」という福本伸行の擬音のようなざわめきが心の奥からわき上がって来ちゃって、この心のもやはなんだろう。不安がざあーっと広がっていくのは何故なのだろう、と思っていたのだけれども。やがて表れてくるもう一つのある感覚。
なんだろうこの既視感。
・・・・まさか、まさか。そうか。そうなのか。もしかして監督の過去作品とアプローチが変わってないんじゃねーのか。
やっぱりそうだ。フランスの女王の人生に自分を重ね合わせて語ってるうううう!
歴史映画として語る気がまるでないのか!しかもわざわざヴェルサイユ宮殿でロケしてまで!馬鹿な!そんな馬鹿な!しかし、それが今、目の前で繰り広げられている!うわあ・・・・。彼女の映画って嫌いじゃなかったんだけど、さすがにこれは・・・。
王妃としての人生、王女としての生活が、「アタシ」サイズに還元されて、観客に提示される。王はセックスレス生活で、実家からせっつかれてどーしよー、なーんてストレスから朝まで騒いで、パーティ三昧、ケーキも食えば恋もする、だって女の子だもおん。だけど出産したらロハスな生活にもめざめちゃったりしてえ。もうパーティなんて流行んないわよね。・・・みたいな。感じで。等身大感覚といえば聞こえはいいけど、あまりに豪奢な生活を魅力的に肯定してみせる感覚には、正直閉口してしまった。これがセレブ女性感覚というやつなのか・・・。
国民の窮乏なんて対岸の火事、みたいな描かれ方で、暴徒を前にしても、アタシ以外のその他大勢って感じ・・・に見えるんだよな。
ごめん。もうね、居心地がね、うん。俺の居る場所じゃない。共感の範囲があまりに狭すぎる。女性の観客はスタッフロールが回り始めても微動だにしない中を、逃げるように劇場出ましたよ。
これ、フランスでも公開されるんだよなあ・・・いいのか?などと思いながら、帰りに久々に「ベルばら」が読みたくなって、文庫版買って帰りました。おしまい。(★★)