虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ」

toshi202013-07-12

監督:藤田陽一
監修:高松信司
原作:空知英秋
脚本:大和屋暁


 テレビアニメ「銀魂」の完結編と銘打った、シリーズ初の完全オリジナルな劇場版アニメーション。


 うん。すごく最終回っぽかった。(←信じてなかった。)
 面白かったんですが。ただ、なんつったらいいのか。これやっぱり・・うん。どう説明しよう。


銀魂-ぎんたま- 1

銀魂-ぎんたま- 1



 ぼかあね。初日に劇場に迷わず駆けつける信者の方々ほどの熱量はないんですけど、空知英秋先生の作品は昔から好きなんですよ。
 デビュー読み切り「だんでらいおん」や、読み切り第2作目「しろくろ」がジャンプ本誌に載った時、「あ、いいな」と思ってて、「世界観はテキトーだし、メジャーにはなりそうな華はない感じだけど、話が面白い」というのが当時の空知作品感で。「銀魂」も最初はまー、ぱっとしない感じでしたよ。コミックス第1巻を買った動機も「銀魂」が読みたいというよりは、それについてくる「だんでらいおん」が読みたいという動機でしたし*1。それでも単行本はずっと買ってて、少しずつ人気が出始めて、アニメ化(最初はジャンプのイベント用)した時点で「おお、奇跡が起きた」なんて思ってて。でテレビで放映が始まって「マジか」なんて思って、気がついたらほぼ全話欠かさず録画してDVDに焼いていましたよね。
 うん。その程度のファンですよ私は←古参ファンじゃねーか。


 ただね。「銀魂」読んでみてしばらくして。僕の中で明確なイメージとしてね。この連載が終わるには「銀時(主人公)が死ぬか、かぶき町を去るしかない。」というのがずっとあったんですよね。


 「銀魂」は、世界観としてはSF時代劇みたいな世界観で。宇宙からの侵略者と地球人が戦争を繰り広げた攘夷戦争で伝説の英雄・白夜叉と呼ばれた坂田銀時が、いろいろあってかぶき町に万事屋というなんでも屋を開業し、そこに坂田新八と神楽を相棒にしててんやわんやする、シリアスな物語も含むSFギャグ漫画ですけど。

 空知英秋は明言はしないけど、この連載のベースにあるのって「カウボーイ・ビバップ」だと思うんですよね。ヤクザとして生きた男がつかの間、宇宙の賞金稼ぎとして「日常」という現在を生きた物語。しかし彼は、やがて「日常」に別れを告げて「過去」に決着をつけるために死地へと帰っていく。
 多分、「銀魂」という物語もそこへ帰結する気がするのです。


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 いつの頃からか、原作でキャラ自身が「サザエさん方式で歳をとらない」とメタに明言するギャグがある通り、連載が長期化するにしたがって、1年が延々とループしてキャラだけが増えていってるみたいな状況が今の「銀魂」ではあって、原作ではそれを逆手にとった「メタ」な長編も多いんだけど。
 今回の「銀魂」はその「ループ」から抜け出して、「銀魂」の「時」が動き出したあとの物語。そして、原作漫画の「終わり」とは別に、「銀時」が「死ぬ」か「かぶき町を去る」事態が世界レベルで進行して、「銀魂」がひとつの結末を迎えた「完結」後の世界に「現在」の坂田銀時が飛ばされる話なのである。


 そしてこの「完結」は実は「現在」の「銀魂」と同じ経緯をたどりながらも銀時の「過去」のイレギュラーによって生み出された、パラレルワールドであることが徐々にわかってくる。
 銀時たちは本来あるべき「現在」を求めて、イレギュラーな未来からその「過ち」を修正するために旅立つことになる。


 今回かなりSFチックな話なのだが、SFとしてはざっくり言って適当である。そもそも宇宙人と戦う地球人が全員「幕府」に支配されてたって世界観も考えてみればかなり「テキトー」な見切り発車な世界観だしね。そこを「ギャグだから」とごまかしながら臆面も無くシリアスをぶっ込むことの出来る面の皮の厚さが、空知英秋先生の持ち味である←注:褒めてます。
 その「テキトー」なSFマインドが生み出すテキトーな世界で生み出された、非常にウェットな「物語」を愛してやまない人々(俺含む)にとって、この話はとてつもなく感動的な話であると思う。


 うたかたの夢であっても取り戻したい、当たり前の「現在」。この物語は東北出身の空知英秋にとって「震災」以後の「銀魂」なのであろう、と思う。



 ただね。
 アニメなり漫画なりの「銀魂」に思い入れのない人にとってはツッコミどころ満載な「時をかける天然パーマ」の話なので、かなり温度差があるんじゃないかな。少しでも「銀魂」に思い入れを持ったことがある方なら、メタなギャグ、ベタベタな見せ場を詰め込んだ、笑って泣ける最高のファンムービーになってると思いましたよ。ファンには超おすすめ。そうでない人には特にすすめません。
 星取りは★★★。ファンならばそこに★ひとつ乗っける感じで。(★★★+★)

*1:2004年4月3日のメモ参照。http://members2.jcom.home.ne.jp/t20/baka_0404a.html