虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ピューと吹く!ジャガー」

toshi202008-01-12

監督:マッコイ斉藤
原作:うすた京介


 「ご注意!」これから始まるアニメーションはやけに良識ぶった方、 くそまじめ野郎、いい子ぶりっこは見る必要なし!!あと、 批評は断る!!(カントクの父)」(アニメ「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!マサルさん」OPより)



 うすた京介は無意味である。



 故に、この作品が映画として破綻するのは必然である。
 ・・・と俺は思う。原作自体にさしたる目的がある漫画じゃないし、原作者の描くキャラクターは彼のセンスによって笑いのリアリティを付与されてはいるが、リアルに考えるならば社会的には完全なアウトサイダーな変態・変人を描くことを得意としている。だから、彼の精神に忠実になろうとするならば、まったくもって映画的なリアリティから浮遊するのは、いたしかたのないところである。
 彼の天才はそういう変人たちを、愛すべきキャラクターとしてだけではなく、いかにも現実に存在する「かのような」リアリティを付与する力業にあると言ってもいい。映画化する際、監督たちは逆に「ありえへん」戯画化する方向に話を持って行く。いかざるを得ない*1うすた京介の世界を現実の物語として「物語化」することは、実はかなり至難だ。実写の物語として成立させるためには、彼らの存在は「ファンタジー」として捉えざるを得ないからだ。


 結果的にそれが「一見さん置いてけぼり」のコントになったとしても。


 良く言えば、原作を知り抜いた人間がそのキャラクターたちの実写化した際の違和感を含めて笑いにする、高度なギャグが次々繰り出されるコメディ。悪く言えば、完全に内輪受けコント。


 だから、この映画は、実はうすた京介の世界を捉える意味では結構がんばってると思う。でも、その代わり門外漢や、まじめに映画を見ている人には、小馬鹿にされたような印象すら抱かせる。この映画はうすた京介への愛にあふれている。だが、それ故に、破綻したのである。
 いやー、俺は、けっこう好きだし、要潤ジャガーも嫌いじゃない。・・・おぎやはぎ小木のハマーは微妙だけど、影千代先輩(板尾創路)とのタッグになった時だけ、妙に違和感ないので、まあいいか、という感じ。ところどころ楽しかったんだけど。ただね、公開して間もなく見たから、うすたファンとおぼしき人たち(および一部子供)は爆笑するけど、そうでない人にはぴくりとも笑わない、という劇場内の温度差がえらいことになっていたのが印象的だった。。



 だから原作読んだことない方々には「面白くはねえよ」と言っておくしかない。よって、心の広い原作ファン以外、見る必要なし。それでもお金はらってみたいなら止めないけど、たぶんがっかりするYO。よっぽど原作が好きな人にだけ★一つ追加で。(ファミ通クロスレビューかこれ)(★★+★)

*1:「のだめ」ドラマが戯画化することで成功したように。