虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「アイ・アム・レジェンド」

toshi202008-01-09

原題:I Am Legend
監督:フランシス・ローレンス
脚本:マーク・プロトセビッチ、アキバ・ゴールズマン


 2007年。世界はウイルスのかもしに包まれた。


 ニューヨーク。世界にひとりだけの俺(ウィル・スミス)。ナンバー1にならなくていい世界でオンリー1。しかも頭もいいんだヨ!抗ウイスル剤を開発して、世界を救うためにこの町での生活を満喫中さ!食料には困らないし、とりあえず水や電気、ガソリンなどのライフラインは通ってるし、犬やDVD映像があるので寂しくないヨ!・・・だけど、涙が出ちゃう。人間だもの。


 というわけで、ウイルスによって多くの人間が怪物化した世界。見た目はゾンビだが、紫外線に弱い敏感肌でどちらかというと吸血鬼に近い生物が、世界を跋扈している。
 「夜、または日陰でないと活動できない」という制約で動く敵との対峙を余儀なくされる、「俺」の孤独に終わりはあるのか。


 「地球最後の男」3度目の男の映画化。らしいけど。


 ・・・うんまあ、それは置いておいて。
 人類が滅亡した世界、という設定だけど、終末感は意外と希薄。どっちかっつーと、ドラえもんの「入り込み鏡」で生まれる「鏡面世界」に近いよね。「のび太と鉄人兵団」の主要舞台の。ライフラインは通ってるけど、存在するのは俺らだけ。という。だから、終末系SFというよりは、孤独な男のメタファーに見えるのかも。
 ゴーマンだけど孤独な男の妄想、と考えた方がしっくり来るの感。それなりに生活を楽しんではいるけれど、唯一の友達は忠実な犬だけで、他に話しかけてくれる人もなし。DVD屋のオンナノコが気になるけど、話しかける勇気もない、みたいな。


 でまあ。敵側の制約が「もやしもん」の春祭ルール(日陰でないと攻撃出来ない)に近いので、なんかこう、一人鬼ごっこみたいな感じで。遊んでるように見える。切実感はあまりない。そういう見方をすれば面白いかな、と思ったけど、主人公はうかつな行動が多すぎるし、物語の落としどころは強引にもほどがある、と思った。結局あのワクチンが出来て、あの人間たちが元に戻ったとして、それで世界が救われる、とはとても思えないんだよね。原作のオチ以上のものをハナから放棄している感じがちょっと志低いかな。
 そんなわけで、世界観も物語の完成度も正直高いとは思わないんだけど、でも、現代人の抱える孤独感にすっと入り込む感じが楽しめたので、まあ、いいかな、と思った。(★★★)