虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「チョコレートファイター」

toshi202009-06-15

原題:Chocolate
監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ
アクション監督:パンナー・リットグライ
脚本:ネパリー、チューキアット・サックビーラク


 この映画のメッセージ。裏金から借りるな。金は返せ。子供に暴力を振るうな。ジージャーがくるぞ。


 というわけで、なまはげ感覚で映画にメッセージを託し続ける(そうかー?)映画監督、プラッチャヤー・ピンゲーオ監督最新作。
 日本のヤクザとの落とし子で、脳に障害を持ちながらも、驚異的な格闘センスと身体能力であらゆる技を吸収するタイの少女・ゼン(ジージャー)は、母親(過去にスネに傷&足の親指損壊)の病気を治すため、今日も今日とて友達のデブ・ムンとともに借金取り立てにでかけます。「オカネチョーダイ」と迫り来る頭の足りない少女とデブに、容赦なく制裁を加えようとする債務者(主に裏稼業関係者)の人々。こうして、少女と債務者たちの壮絶な戦いが幕を開けた!


 ブラッチャヤー・ピンゲーオ監督のアクションスターの作り方として、基本的にアクション担当はアクションだけに集中させて、なるべくキャラクターのセリフを極限まで抑え、闘う理由を単純明快にする、というのがあるせいか、今回の主人公である少女は「お脳に障害」という設定になってるんだけど、まー今回は闘う理由が「貧困!難病!金!」という。基本的に共感するにはあまりにストレートで、まあ、基本的にかよわく見える「怪物」ですよね。
 とはいえですね、タイの人間は怖いね。子供だろうと、金のためなら容赦しない。刃物持って殺す気満々で本気で襲いかかってくるのね。前作までのトニー・ジャーの場合、トニーが強すぎてだんだん相手が気の毒になってくることがあったが、今回は見た目が「ワカくて、キャシャで、オツムが足りない」という少女なので、ハラハラ感が違う。
 ノーCG!ノーワイヤー!という惹句は多少嘘で、ゼンの心象を映したアニメはCGだし、ビルの壁際での格闘に限りワイヤーを使ってたりするんだけど、しかしまー、基本的にはガチンコなのね。タイの格闘シーンは相変わらずトチ狂ってるなあ、と感心しながら見ておりました。クライマックスのビルの窓際やら看板に捕まっての大乱闘、負けたら落ちる、というシーンなんて、スタントマン、ほんとに落とされてるもんな。うーわー。バッカじゃねーの、そこまでやれって頼んでねーよ!というアクションが次々と繰り出されて、まー、フツーの日本人の感覚からしたら感想は「頭オカシイ」ですよね<無論褒めてます。
 格闘シーンも基本的にマジで、ユーモアを出そうとしているのが感じられるのは肉屋での格闘シーンでの「包丁ギャグ」という・・・。頭からズズーッとすべっていって「うわー刺さるとこだったー」とか、「刺された!・・・いや、ササッテナーイ!」とか、「お前なに俺に包丁当ててんじゃー」みたいな、笑わせるつもりが劇場内凍り付かせる、という暴力的なギャグの数々。まあー、笑うどころじゃないですよ。


 しかし、何だ。エンディングが全然ハッピーエンドに見えないのは良かった。暴力は幸せを生まないよ、という感じで、抜き身の刀のような暴力を使うことで、大事な「なにか」が滑り落ちる感じは「マッハ!」のハナシを思い出した。
 ゼン演じるジージャーちゃんは若く見えるけど、撮影当時20代前半らしい。うーわー若作り。「エアマスター」映画版とか全然イケそうだ。(★★★★)