虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「インクレディブル・ハルク」

toshi202008-08-03

原題:The Incredible Hulk
監督:ルイ・レテリエ
脚本:ザック・ペン


 個人的にごひいきで、ヨーロッパ・コープが生んだ最大の才能とまで思っている「ダニー・ザ・ドッグ」のルイ・レテリエ*1の、ハリウッド足がかり第1弾。


 という見方をしているのは俺だけか。俺だけですね。ごめんなさい。あと「サスペクト・ゼロ」の脚本家、ザック・ペン最新作ね。脚本、ノートンにダメだしされて書き直されちゃったらしいのはご愛敬・・・。
 今度のハルクは、言ってみればヨーロッパ・コープ時代に「早く、安く、面白く」がモットー?の、リュック・ベッソンのペラ5枚並の脚本(by m@stervision)を如何に面白くしていくか格闘してきた、雇われ監督を長く務めてきたルイ・レテリエらしく、的確なアクション演出と彼の美点であるテンポの取り方の巧さがうまく映画と馴染んでおり、俺の個人的な期待を裏切らない。しかもこれほどの大作にも関わらず、製作期間の猶予があまりもらえず*2製作ペースがタイトになったらしいが、それを感じさせない職人監督ぶりはさすがの手際だ。


 ブルース・バナーがハルクになったきっかけは大胆に省略し、ハルクになることを如何にして抑えるか、ということに腐心しているバナー青年の描写に費やし、彼が脈拍200を超えるとハルクになる設定に変えたことで、非常に明快な娯楽作になっている。内に制御不能の怪物を抱えていることへの不安を、数値化という檻の中ならばとりあえずおとなしくしている、ということにしたことで、そこに理性的でひかえめな青年を演じるノートンと、ハルク化したときの姿のギャップが、画的に面白い効果を生んでいる。
 「ファイトクラブ」もそうだけど、普通の青年→怪物化の流れがあるとノートンは面白いし、基本的には朴訥としたたたずいまいの人ゆえに、内なる怪物との闘いを表現するのに向いているのかもしれない。リヴ・タイラー演じる女博士も思ったよりはぐっと良かったしなあ*3


 ブラジルでの逃避行アクションは、ジェイソン・ボーンシリーズのテイストもあり楽しかったし、ハルク化した後の奇をてらわない正統派アメコミアクション演出は、アメコミ映画の枠を(いい意味で)逸脱した「ダークナイト」とセットで見ると、より味わい深いものになりそうな気がする。(★★★★)

*1:いろいろな感想読んでて思ったけど、みんなこの人を過小評価しすぎだと思う。

*2:たぶんラストの「仕掛け」と関係があると思う

*3:そらジェニファー・コネリーと比べられちゃ残念だけど、それは言っちゃいかんと思う。