虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「フィッシュストーリー」

toshi202009-06-11

監督:中村義洋
原作:伊坂幸太郎
脚本:林民夫


 2012年に地球は滅亡する。彗星が地球に衝突することは、確率的に100%。人類には避けようがない。その日、「預言者」は中古レコード屋にやってきた。いるのは一人の店員。一人の客。
 彼らはやがて知る。ひとつのレコードから始まる「奇跡」の物語を。


 ひとの人生ってえものは何がきっかけで変化するかわからない。


 1本の映画、一曲の歌、ひとつの試合、1冊の本、一つのブログ・・・・。なーんつってな。


 ぼかあ10年近くいろんな感想を書いていて、まあ、なんだ。それだけですよ。私が人に与える影響なんてのは微々たるものなわけでね。でも、それでも、なにか、なにか他人に「届く」文章がかけたらいいなあ、とは常々思っているわけです。


 それがなかなかうまくいかないから、ムズカシイし、ましてや人を変えることなどそうそうできはしない。けれど。生きてる限り、人を変化へと向かわせるなんらかの「きっかけ」を与えることはあるかもしれない。たとえば、1冊の本、1本の映画、1本のゲーム、1本のアニメを見せる「きっかけ」にはなったかもしれない。そして、それで、もしかしたら、人生が変わった、なーんていう人もいる・・・・かもしれない。


 かもしれないかもしれない。願望のハナシである。しかし、願望は、その人間がなにかを「し続ける」明確な「動機」になりうるのだと思う。


 この映画は、基本タイトル通りの「FISH STORY」、つまり5つの世代を股にかけ、一人の「英雄」が誕生するまでを描いた「ほら話」なわけで、その物語のピースをシャッフルして、「ぺこっ、ぺこっ」とはめていって、最後に「ひとつの物語」として完成する、という構成になっている。そしてそのほら話の出来自体はそれほど大したものでもないんですけど、その「ジグソーパズル」感が物語のカタルシスになっている。ま、それはともかく。
 世代、年齢、性別、人種。あらゆるものを超えて。
 この映画は、人間がなにかを作ったり、書いたり、しゃべったり、愛したり、という人間の行動の大元である、「他者」や「世界」に影響を与えていきたい、という「願望」のようなもので出来上がっていて、その「気分」こそ、なにかを「し続ける」人間の「希望」そのものなのだ、と思う。そんな人間の「気分」をこの映画は、この物語は、明確にすくい取っていたと思うのである。


 などと、会社帰りにこの映画を熊谷で見てから、江戸川に着くまで2時間以上かかる電車内でそんなことを考えながら帰路につきました。(★★★)