虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ウォンテッド」

toshi202008-09-21

原題:Wanted
監督:ティムール・ベクマンベトフ
脚本:マイケル・ブラント/デレク・ハース/クリス・モーガン



 中学生の頃、あの角を曲がれば美少女とぶつかる夢を見た。


 社会人になって。ボクは薬局でアンジー似の女暗殺者に出会った。



 というわけで。


 もう毎日最低だ。変わりたい。でも自分から変わる勇気がない。才能も勇気も自信もない。女性は私のことを “貧弱な坊や”と馬鹿にした。 私はブルワーカーフラタニティ*1を 始めることにした。 モーガン・フリーマンに似たリーダーがあなたの才能を保証し、自信を奮い立たせ、目つきのきついオネエサマや百戦錬磨のコーチ陣が徹底的にあなたの才能を開花するまでサポートだ。効果は短期間で現れ、 満足できるものであった。 今ではだれでもが私を立派な たくましい男性としてみてくれる。 ...
 あとはあれだ。千年続いた、予言システム「繊維さまのお告げ」(仮名)の言うこと聞いてればあなたも立派な暗殺者の仲間入り。


 という話を、カザフスタン出身のベクマンベトフ監督が「ナイト・ウォッチ」シリーズで鳴らした自慢のコッテコテ演出で、映画化。既視感がありながらも新しい、というその確固たるスタイルは新たな才能を予感させる面白さだが、この映画の白眉は、その主人公が急激に成長していく様を「才能があるから」で押し切り、急激な成長のためのサディスティックなまでの特訓を小気味よく見せていくその過程にある。
 だからこそ、そこに冷や水を浴びせるようなドラマをクライマックスに配置したかったんだろうが・・・・。


 この終盤の展開については正直、ひねり方を間違えた気がする。千年続いたシステムが、たかがこんなことで?という「ほつれ」から瓦解させるのはさすがにどうなのか。それに主人公の選択は、個人的にはあまりかっこいい選択とは思えなかった。彼が肉体的な部分だけじゃなく、精神面まで成長していたならば、決してこんな「恩知らず」な行動には出ないはずじゃないか?と思う。百歩譲って行動するのはいいとして、それでも葛藤するシーンは入れるべきだったと思う。
 コテコテの漫画的なアクションや、「マトリックス」や「ファイトクラブ」よろしく、変身願望がかなっていく過程まではノッて見られた分、終盤のまとめ方にもう少し主人公の精神的な成長や千年という「時代の重み」があったなら、「傑作」の域までいけたのに、と思う。でも、楽しかった。(★★★☆)

*1:創設千年の暗殺組織です。伝統と信頼と実績のある特訓は、あなたの安心・安全を保証するシステムを採用しています。