虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ジャンパー」

toshi202008-03-07

原題:Jumper
監督:ダグ・リーマン
脚本:デビッド・S・ゴイヤー/サイモン・キンバーグ/ジム・ウールズ
原作:スティーブン・グールド


 もしも、いじめられっ子にテレポートが身についたら。
 ということで、SF(すこしふしぎ)チックに能力を手に入れた少年が、駄目な方向に能力使いまくって若いみそらで盗んだ金でブイブイ言わせていたら、ある日、自分のような能力者を狩る人間が現れて・・・という話。ドラえもんじゃなくて四次元ポケットだけ手に入れたのび太、高畑さんのいないエスパー魔美、オビ=ワンの言うことを聞かないアナキン(・・・あ、それだ!)に、ついにその行いを戒める男が現れる。
 能力者じゃない、だが、テレポーター狩りのエキスパートのその男。まさにジャンパーという秩序を乱すものを正す、正義の男。ただひとつ、普通の「正義」と違っていたのは、その所属しているのが「狂信的宗教団体」直属の組織「バラディン」だったことなのです。


 こうして、小狡く生きる若き能力者2人と、有能だけど世間的に頭おかしいプロフェッショナルたちの、熾烈な追いかけっこが幕を開ける!!


 えー。基本的に悪事に頓着せず、与えられた能力を気持ちいいほど「自分のためだけに」使う若者、というヘイデン・クリステンセンにアテ書きしたかのような主人公は、決して深く共感はしないけれど、アリだとは思う。
 ただ、俺としては、もう完全に「パラディン」登場以降、パラディン側から映画を見てますよね。だって見る前はてっきり「同じ能力者」の小競り合いなのかと思ってたら、パラディンって基本的に悪事も働くけど「スペック的に普通の人々」で構成されてる「神からのギフト」ハンターじゃないですか。「えー!」ですよね。もう「どうやって追い掛けるんだろう」と思ってわくわくして、ある方法をつかって若者たちをきちんと追い詰めて「おおおー!」と思ったりする。スペック的には完全に不利なのに、それをものともせずに追い掛けてくるプロハンターの手際をきちんと描いているので、ちょっとその辺がわくわくしましたね。
 ハンターかっちょいい!、ともう、完全にサミュエル気分で映画見てましたが。アナキンの野郎もさるもので、憧れの婦女子の前ではしゃいで覚醒しちゃったりするんだけれども。


 追い掛ける側、追う側。あなたが応援するのはDOTCH!?


 という邪道な見方をしていたわけですが。映画としてちょっと物足りないのは、いろんなところで指摘されてるけど、ちょっと一本の映画としてのエピソードが足りない。要はジャンパーたちのぼんくら生活と彼らの追いかけっこを描いただけで、ちょっと一本の映画としてストーリーに厚みが感じられない。つまり、だし惜しみ感が非常に濃厚だということ。いくら「続編」ありきの映画だとしても、ひとりの青年の成長の側面をきちんと描かずに、ただ「追いかけっこの末主人公ヒロインを救うために覚醒しました」、じゃあねえ。スーパーサイヤ人じゃねーんだから。
 能力を使うことの戒めも、パラディンの「狂信的集団」という個性のため霧散している感もある。第2作でパラディンにももう少し説明が欲しいところではあるけれども。第2作はもちろんあるんだろうけど、わたくしはパラディンの秘密の公開と、彼らの更なる健闘を期待します<そっちかい。がんばれ、サミュエル!(★★★)