虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「NEXT」

toshi202008-04-26

原題:Next
監督:リー・タマホリ
脚本:ゲイリー・L・ゴールドマン/ジョナサン・ヘンズリー


 この映画のオチはだれにも言わないでください。


 ・・・てなわけで。
 2分先の自分の未来の危機がわかる男の逃亡劇&その男の争奪戦を描く、SFアクション。


 えーと。面白かったです。以上<コラ。

 というわけにもいかんか。えーとね。バカ映画とか突っ込みどころ満載という評をよく見かけた映画でそれはそうなんですけど、結構話自体はしっかりしていて面白い。全体的に「高尚にしてもおかしくない話をB級娯楽映画に落とし込んで作っている」印象があるんだよなあ。買いかぶり過ぎか?と自分でも思うんだけど。
 この映画の基本ラインは能力を使ってその日暮らしのマジシャンで生計を立ててる主人公が、能力の関係で「未来の俺の嫁」を知覚して、それに運命を感じて彼女をナンパして、ついにオトし、今度はその彼女を守るために能力フル活用!・・・という話で。この基本ラインにそって主人公は動くわけ。その基本ラインはきっちり踏襲される。
 で、主人公の能力の使い方がかなり面白いというか、基本的には「バッドエンド」の情報を得て、それを有効活用するんだけど。この、主人公がナンパに全力で能力を使っているシーンは、この映画を象徴するシーンで、「ナンパ失敗」を繰り返すショートコントがほんと面白い。そしてそれが、いわば主人公の「能力」の有りようと、メンタリティそのものとして提示される。


 主人公の能力のすごいところ、というか主人公がすげえのは、最大2分(「彼女」が絡んだ場合それ以上)の主人公の危機に関する情報が主人公の脳に流れてくるんだけど、それをほぼ2秒ですべてを理解してそれを有効活用するんだよ。すげえ脳の情報処理能力!おめえはジェイソン・ボーンかよ!つーか、ボーンだって無理だよ!的な「情報処理スピード」を誇るところで。これはね、見ていてほんと「ありえねえ!」と思ったりしたんだけど。


 そんなスゴいスキルを、気持ちいいくらい自分本位にしか使ってないボンクラ全開のおっさんを、ニコラス・ケイジが演じているだけでまず可笑しいんだけど、それに振り回されるのがFBIの、ジュリアン・ムーア演じる中年女捜査官で。彼女は盗まれた核爆弾を探すために、かなりエキサイティングになりながら主人公をマークしていて。彼女は見ているこっちが「2分間の予知て・・・中途半端じゃん?」って思ってる主人公の能力をかなり高く評価していて、「カレってばすごいでしょー」って、「2分先の未来が読める能力」のすごさを同僚に聞かせるんだけど、同僚は「はあ、そうすか」みたいな感じで聞き流してて。「(それより犯人普通に追った方が早いんじゃないスか?」みたいな態度がありありで、もうなんか微笑ましすぎる。
 そんで、あんまりジュリアン・ムーアがエキサイティングに追跡しているもんだから、FBIを監視していた犯人であるテロ組織も、主人公をぶっ殺そうと追跡を開始する、という展開で。迷惑なおばちゃんのせいで、主人公、要らん生命の危機を抱えたりもしてて、もうこの辺で、犯人側の単細胞っぷりとかニヤニヤがほんとに止まらない。つーか、すごい、すごい面白い。


 この辺、さまざまなつっこみどころ、と呼ばれる箇所は「分かって」作ってるんじゃねーのか?という感じがすごいする。突っ込みをあえて流して、観客側の「おいおい」というツッコミ覚悟でやっていると思えるくらい、物事の歯車が「ガチン!ガチン!」とはまっていく感じがあって、これはね、結構感動するんだよな。
 で、主人公は「バッドエンド」の情報を得て、それを冷静に処理しながら、危機を乗り越えるんだけど。これ、考えてみたらすげえよな。自分が死んだりした怪我する映像を見ても冷静な判断力を失わない主人公。すごい。この辺は「訓練」なんだろうな。すげえ。マジシャンという職業も、このへんのリアリティの裏付けになってるところも面白い。ここらへんで、実は「ジュリアン・ムーア」は(誤解していたにも関わらず)正しかったんだけど。
 だけど、それも実は・・・というオチがきて、「あー!なるほどねー」などと思った。要は主人公が「守るべきもの」を手に入れたときから、カレの能力は「FBI」が望むものと合致していく、という流れに、思わず膝を打ったりしたんである。


 自分本位の思考回路の主人公であっても、守るべき者を得た瞬間に、それが「国家の危機を救う」モチベーションに成りうる、という話の流れは、個人的にかなり腑に落ちる話で、「うまい!」と思った次第。
 というわけで、もう自分としては全然面白い映画でした。大好き。(★★★★)