虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「映画クレヨンしんちゃん/ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者!」

toshi202008-04-27

監督・脚本:本郷みつる


 本郷みつる監督復帰作。うっかり“闇の扉”を開けてしまったしんのすけが、地球支配をたくらむ闇の世界“ドン・クラーイ”から家族と地球を守るため、選ばれし勇者となって闇の力に立ち向かう、というお話。


 全体的にかつての懐かしさを感じさせるシンプルな作品になったのは、原点回帰の志を感じさせる。徐々に日常を浸食させるという「ヘンダーランド」を彷彿とさせる展開や、「オトナ帝国」以来の感傷的な要素の排除、最近のシリーズまでお約束を切ってかつての「本郷カラー」を全面に押し出し、往年のしんちゃんの香りを感じさせるギャグのテンポのピッチまで変えてきたのは、良くも悪くも引き継がれてきた「原恵一」カラーが「リセット」された感あり。
 一番大きいのは湯浅政明が復帰していることで、夜の街の描写などの独特な世界観はその成果ともいえるかな、と思う。


 ただ、ファンタジーにしてはいまひとつ世界観の作り込みが甘く、世界が闇の影響を受ける描写をあまりに平坦に描きすぎているために、ドラマとしてのひっかかりがないのが少々つらい。泣きの要素を減らすのはいいとしても、「ヘンジル」能力を持つサポートキャラのマタ・タミらとのドラマをきちんと描かないと結局マタは「便利キャラ」にしかならないではないか、とも思ったし、全体的にこじんまりとまとまりすぎた気がするのだよな。
 とはいえ、原監督に遠慮しない作風を押し通したのは評価したい。12年ぶりというブランクもあるし、この映画は、シリーズをリセットさせる意味での肩慣らしとするならば全然許容できる。次回作も当然本郷監督の続投を希望する。次回作、次々回作での「新生クレしん」の傑作誕生へ希望をつなげる意味での★3つ。(★★★)