虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「映画ドラえもん/のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜」

toshi202007-03-10

監督: 寺本幸代
原作: 藤子・F・不二雄
脚色: 真保裕一


 新生キャスト・スタッフによる劇場版第2弾は、またリメイクである。大長編5作目にあたる「のび太の魔界大冒険」を、元シンエイ動画のアニメーターだった過去を持つミステリー作家・真保裕一氏が脚色。監督としてのフィルモグラフィがOVA版の「僕は妹に恋をする」という、寺本幸代監督の劇場版デビュー作となる。


 大長編ドラえもんの中でも最もトリッキーな作劇で知られる本作に真保氏が惹かれたのはなるほどな、と見てて思う。ミステリ作家としての血がうずいたのか、大筋では原作を踏襲しつつ、作劇としていろいろ、新たな仕掛けを施しているのが面白いところで、とくに美夜子さんと満月博士の「現実世界」の姿が描かれたり、美夜子さんの母親が物語に関わってくる、という辺りが印象深い。
 ドラえもんとファンタジーを融合する辺りのバランスが相変わらず面白いのだけれど、こうしてあらためて見ると大味な世界観。最後のオチは「リメイクです」と断らないと割と辛いのだけれど、その辺の作劇が女性向けの「泣かせ」に変化する辺りが、今風か。


 寺本監督の力量は、意外といっちゃなんだがなかなかだと思う。絵コンテの部分であの原作の面白さをきちんとなぞりつつ、見せ場の見せ方も、なかなかこなれていて、魔法の世界をドラえもんのび太が初めて実感するシーンの描き方は、「おおお」とちょっと感嘆した。
 あと、これはあくまで好みの問題なんだけど、俺、前作の監督・渡辺歩氏のあの「泣かせ」の部分での、ダメ押し演出するあのウェット感がなんか苦手*1で、「のび太の恐竜」もあの別れのシーンで逆に冷めちゃった、みたいなことがあったんだけど、その辺、あまり暑苦しくならないくらいの演出なのも好印象。のび太が自分の無力を実感する、あの名場面がきちんと泣けた。


 これでリメイクでなければなあ。いや、この作画で「鉄人兵団」を・・・というのも考えないではないですが、この路線を続けるといずれ先細りになりそうな気がするのである。次回作は志を高く、オリジナルに挑戦してほしい。全体的には秀作だと思うけど、さらなる高みへの奮起の期待をこめて、あえての★3つ。(★★★)

*1:スタッフロール後のおまけ映像は氏の演出。やっぱ俺この人の演出のタメ方が、ちょっと苦手だと思った