虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「次郎長三国志」

toshi202008-09-20

監督:マキノ雅彦
脚本:大森寿美男


 津川雅彦が映画監督になったときに、何故「マキノ」の名を持ちだしたのか、と言えばとにかく「次郎長」がやりたかったからに相違ない、とは思っていた。その熱意がなければ決して成立する企画ではあるまい。


 元々マキノ雅弘監督の東宝からしてが9部作にして完結していない、という長大な話で、つまり、どうしたって、舌足らずのダイジェストなるのは承知で、それでもなお、作っておきたかったのだと思った。そういう話をなんとか現代でやれる、という証明するために作られたパイロット版、と考えた方がいい。これで完成版だっつんなら、怒るけど、「この程度」で満足してないと思いたい。
 オリジナルを知らない人間からすると、この映画は単に舌足らずな映画に見えるかもわからんし、チャンバラの少ないヤクザ映画、という風に映るかもわからんけれど、大筋ではオリジナルに近い映画ではあるのよ。この映画自体がオリジナルへのオマージュに満ちあふれているシーンを、現代でも撮れることを証明しただけでも、まずは重畳である、と思う。(清水港の再現っぷりは泣くところよ)


 だから、オリジナルを「ゴジラ」シリーズで行っているようなデジタル・リマスターで完全に修復&再公開して、如何に「次郎長三国志」が素晴らしいシリーズであるかを世間に知らしめ、なおかつ、三部作、またはそれ以上の予算と撮影期間を確保して、本歌取りな演出を身につけてから、再チャレンジしてほしいなあ、と思うのである。その時、この映画は真に報われると思う。まずは、「次郎長」ファン及び時代劇ファンは、そのデキに決して満足はしないだろうが、それでもこの映画にお三度踏むくらいはすべきだと思う。
 作られたことに意義のある映画ってあるのですよ。(★★★)


 キャスティングに関しては、まあ、こんなもんだろうなあ、と思うものの、鈴木京香はミスキャストじゃないかと思う。お蝶はもう少し線が細い方がよいと思う。鈴木京香はちょっとした病気くらいじゃ死にそうにないしなあ。あと、竹内力兄貴の三馬政はちょっとやりすぎ。
 演出は、もう少し勉強すべき点は多いけど、悪くはない。殺陣の呼吸を、もっと叔父さんのリズムに近づけられれば、俄然良くなるはず。