虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ただ、君を愛してる」

toshi202006-11-17

監督 : 新城毅彦


 もう。まいった。ごめんなさい。許してください。
 いやあ、本当にね。ひどい!この映画!だって、可愛いんだもん、宮崎あおい


 ・・・えーと、言いたいことをまとめます。「可愛すぎる宮崎あおいがひどい!」・・・あれ?


 仕切り直し。


 この映画の原作は「いま、会い」の市川拓司の手になるもので、物語の形式も、その傍流に属します。言ってみれば基本キョドってるのになぜかモテモテの主人公、そいつに圧倒的な好意を抱いて近づいてくるヒロインとの、プラトニックで哀しい、そしてちょっと変則な純愛物語、というアレです。意地悪な見方をすれば、東宝で成功した原作者の作品を、東映が柳の下の二匹目のどじょう目当てに映画化した作品、とも言えます。


 主人公の玉木宏がベストのキャスティングだとは思わない。彼の完成されたイケメンで均整のとれた肉体でナチュラルにキョドられても、どこか「不自然」な感じがぬぐえないところがある。ですが、もっと根深いのはヒロイン演じる宮崎あおいなんですよ。
 主人公・誠人は当初、ヒロイン・静流にはほぼ眼中にありません。闊達で友達が多い黒木メイサ演じるみゆきに片思い中で、静流は一方的に好意を寄せて近づいてくるわけですが。彼女に対する周りの扱いというのが言わば「可愛い」ではなく「変な女」という扱いで、美醜でいえば「可もなく不可もなく」というところ。彼女いわく、「髪が針金」で「眼鏡」で「成長が遅くて胸がない」というのがコンプレックスで、主人公に女を感じさせることができずに落ち込んでいる、といった具合。
 彼女と主人公はひょんなことから、ひとつ屋根の下に住むことになるわけですが、彼女がいっくらアプローチしても主人公はなびかない。そんな彼女は、主人公のために成長して、セクシーな大人の女になろうと努力していく、というのが、物語の鍵を握るわけなんだけれどもね・・・・。困ったことにですね・・・


 可愛いんですよ!ヒロイン。つーか宮崎あおいがさ!眼鏡で、針金髪で、少女少女した状態で、すでに超可愛いんです。


 だからおかしいんですよ。


 ひとつ屋根の下にさ、宮崎あおいと住む段になった時にですよ。ヒロインはね、なんといきなり主人公に抱きついてきて「こうなった以上体で払う心の準備は出来てます」とかエロゲーみたいなこと言うわけさ。そしたらさ、主人公・・・なんと「そんなつもりはない」って固辞しやがんの。


(・・・朴念仁かてめえええええええええええええ!ざっけんな!タイガーバームだろーが、ローションだろーが塗りたくってやれやあああああ!)


 ・・・って心の中で絶叫しましたさ、こっちはさ。つまり、物語上ではヒロインは、主人公が抱きつかれてもそんな気分にはならない女性、ということになってるわけさ。でも、見てるこっちはもう、主人公の頭かち割りたくなるくらい、悶えてるわけですよ。
 しかも、主人公から「誕生日になにが欲しい?」って聞かれて「キス」とか言うわけさこの娘!ほかに何が欲しい?と聞かれても「キスしてもらえたらなにもいらない」なんつってもう、あまりのあり得ないセリフに椅子からずり落ちちゃったよおじさんはさ。


 で、物語は終盤で、ヒロインに<成長すると不治の病が発症する(そのために成長を抑制していた)>という哀しい秘密が明らかになるわけですけど、納得いかないのはですね、「だったら<成長しない>まんまでおじさんは全然オッケーですよ」ということなんですよ。むしろそっちでお願いしますと。そんな事情があるんなら、そのまんまでも全然イケんじゃねーの的なことを思っちゃったわけですよ。でもそれでは、純愛物としての物語自体が破綻する。そんなことを思ってしまったのは、宮崎あおいが何をやっても可愛いせいなのである。
 あざといくらい可愛いのも考え物だ、という話。(★★★)