虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ジュラシック・ワールド」

toshi202015-09-09

原題:Jurassic World
監督 コリン・トレボロ
脚本 リック・ジャッファ/アマンダ・シルヴァー/コリン・トレボロウ/デレク・コノリー
原作 マイケル・クライトン


 今年の夏は暑かった。そして堪えた。


 仕事は休み取れないわ、暑いわ暑いわ暑いわで、本来それほど苦手でないはずの夏場に完全にグロッキーになってしまい、夏映画大作を見るのが完全に後手後手に回ってしまい、映画感想もそれにあわせて順調に時機を逸しながら更新してるような状況でありました。以上、愚痴。


 で、まあ、ようやく「ジュラシック」シリーズ4作目、今年の夏、世界的最大ヒット作を9月も大分過ぎてから見るような有様でありました。



 てなわけで、遅まきながらIMAXで鑑賞。まあー、評判通り面白かったです。
 イスラ・ヌブラル島で起こった「ジュラシック・パーク」の惨劇から22年後、インジェン社はマスラニ・グローバル社(マスラニ社)に買収され、島はサイモン・マスラニ社長の所有に渡る。マスラニ社は、故ジョン・ハモンドが夢見たテーマパークジュラシック・ワールドを実現させ、今や世界中から毎日二万人の旅行者が訪れる人気の観光施設として成功を収めている・・・という設定。
 すごいなと思うのは脚本がきちんと練られていて、「アトラクション映画」な感じがしないことで。「ジュラシックパーク」的パラレルワールドの時間軸で時代が動いていることがすでに面白いんですが、なんだかんだありながらも、ついに恐竜が娯楽として一般市民の手に触れられる形で饗される。その完成されたものを映像で見せられると、やっぱりうれしくなっちゃいつつ、その中に普遍的な家族の問題や男女関係の問題、海外資本の席巻やら、戦争が産業として根付いているアメリカらしい流れもあったりして、一筋縄ではいかないいくつものドラマの流れを丁寧に捌いてやがて一本の話に集約されていく点は素直に感心する。人間達の思惑や個々の事情が、物語と有機的に結びつく物語は、それだけですっと心に入り込む。


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 本来的なヒーロー像を地で行く元軍人でワイルドでありながら情に篤く恐竜への愛も深いパーク管理人のオーウェンクリス・プラット)や、両親が離婚間近であることでなんとなく冷め切ってた兄弟仲を困難に立ち向かうことで修復させていくザックとグレイの兄弟など魅力的なメインキャラたちの中で、個人的に印象的だったのは科学者でパークの運営管理者、そしてザックとグレイがパークに来るきっかけとなるクレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)。最初は姉から、ザックとグレイら甥たちを面倒みるように言われながら秘書にすべて丸投げして仕事を優先してしまう「情の無い叔母」として登場し、ぶっちゃけ観客をいらつかせるタイプの「非人間的」な側面がクローズアップされながら、パークが目玉商品であるハイブリッド恐竜の逃走による混乱の中で、少しずつ本来の人間性を取り戻し、最後には甥たちのために奔走し、自らの生命倫理観を反省するなど、名実ともに映画のヒロインになっていく流れが非常に面白かった。プライス・ダラス・ハワードのどこか人間離れしたキャラクターを反転して、いい意味で観客を見事に裏切る点も非常にうまくて唸った。
 人間が科学の力を過信して、生命への敬意を失えばしっぺ返しを食う、という「ジュラシック・パーク」本来のテーマへ回帰しつつ、関係者だけじゃなく一般客2万人まで恐竜たちの暴走に巻き込まれるという、パニックムービーとしての容赦なさもシリーズ最恐なら、ラストバトルは「ジュラシック・パーク」では狡猾な悪役扱いだったラプトルを、敵か味方かワカラナイ存在として扱うことで物語をサスペンスとしての面白さでひっぱりつつ、ラストバトルではあの恐竜を満を持して参戦させるなど、熱い展開のつるべ打ち。「友情!努力!勝利!」な娯楽映画の王道の興奮。「あいつ」が登場した時は思わず「うおおおおおお」と声が出た。出るよそりゃ!


 夏に蓄積されたおっさんの疲れも吹っ飛ぶ堂々たる傑作ぶりに素直に脱帽であります。見れて良かった。大好き。(★★★★★)


ねこめ(?わく) 2 (夢幻燈コミックス)

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