虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ナイトミュージアム」

toshi202007-04-05

原題:Night at the Museum
監督: ショーン・レヴィ
公式サイト:http://movies.foxjapan.com/nightmuseum/


 うちのサイトは物語至上主義、という看板を掲げてまして。それで誤解されやすいのは、俺が物語の「完成度の高さ」を求めている、と思われがちなことで。「完成度の高さ=物語として最上」である、と思っているかというと、決してそんなことはないのです(そんな人間が「龍が如く」に★5つつけるわけがない)。
 いや、完成度、高いに越したことはないんですよ。ただね、完成度よりも重要なのはむしろ「物語の可能性を如何にして広げようとするか」という意志。リアルな物語であろうとすることよりも、物語を遊ぶ作品の方が、物語の醍醐味を与えてくれたりもする。この世の現実は有限の地平だが、物語の可能性は無限の宇宙にある。



 この映画、決して物語の完成度は高くない。高くないけれど、俺はこの映画、楽しかった。自然史博物館という、アカデミックかつ大まじめな場所を舞台に、「もしもその展示物が動いたら」という妄想をひたすらくだらなく広げていく、というこの映画。そこに必然もへったくれもなく、ただ、この妄想をやりたいためがだけに、物語は作られる、という。


 この映画のすばらしさは、「少年よ、妄想を抱け」と高らかに謳っていることだ。現実や真実は道が限られるが、妄想は無限だ。妄想すれば動かない恐竜は動きだし、ルーズベルトは先住民に恋をする。ジオラマのローマ人と開拓民たちが戦争し、やがて友情を育むのである。
 常に「現実」に対して「妄想」すればこそ、物語は生み出されていくのだ。それを奨励するこの映画を、「物語至上主義」を標榜する私が嫌いになろうか?


 きらいになるわけがぬわい!のである。むしろどんどんお子様に見せなさい!と勧めますね。


 実際、アメリカでは、この映画によって、閑古鳥が鳴いていた博物館は活況を呈しているときく。真面目なお子様はしっかり勉強して先人に思いを馳せ、勉強嫌いのお子様は想像&妄想の翼を広げる。そして、博物館は潤い、展示物を充実させる。まさに理想的。そして「妄想」の、そして「物語」の力、侮りが難しじゃないか!と私は感嘆するのである。(★★★☆)