虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「貞子3D2」<スマ4D版>

toshi202013-09-20

監督 英勉
脚本 保坂大輔/杉原憲明



 同僚からタダ券を戴いたので、ありがたく映画館で、スマートフォンを映画の演出に組み込んだ<スマ4D版>を鑑賞させてもらったのだが、意外と面白かった。


 リアルというのは時代によって変化する。


 いまや携帯電話の無い世界など考えられなくなったように、技術進化とともに、我々の肉体は、それに付随するデバイスを変えてきた。「光あれ」と神が言って「光」という「デバイス」によって進化を続けてきた生命体である我々である。「火」を得て、ランプを得て、電灯を得て、LEDを得た。道具は時代によって変化し、その多様性の中に暮らす我々の中の「リアル」も常に変化を遂げてきたわけである。


 電話、ラジオ、テレビ、ビデオ、そしてケータイ。時代が移り、道具が変わり、そして人が存在する限り、呪いの形もまた、そのデバイスの多様性の広がりの中に染みいっていくのである。


 この映画は「リング」から初登場した山村貞子を、「リング」から連なるシリーズとは関連づけずに、オリジナルでモンスター化させてリブートしたシリーズの最新作であるが、「リング」で「呪い」が「ビデオ」によって伝播したように、本作ではいよいよパソコン、及びスマホの中にまで貞子の呪いは浸食していく。


 この映画が特化しているのは、その物語性ではなく、スマホアプリを通した「アトラクション性」である。
 この映画ではあらかじめ持っているスマホにアプリをダウンロードしておくと、「観客」のスマホは呪いにかかっている、という体で物語が始まり、本編前に映画を見るまえの最低限の準備の説明シーンで幕を開ける。スマ4Dを楽しむための手順を説明するために某俳優が登場し、一通り説明を終えると、スクリーンで喋っていた某俳優は「呪い」によって死亡する。そして、観客のスマホに届くのは、俳優の「死亡通知」である。


 たとえば劇中の女性が電話をかけると、観客のスマホに「着信」が入る。おそるおそる耳に当てると、そこから映画の音声からは聞こえない、電話の相手の声が聞こえてきたりする。
 スクリーンにカメラを向けるとスクリーンから大量の「何か」が襲ってくる仕掛けとか、スクリーンをこすると、劇中の女の子が書いていた絵が出てくるなどの演出があり、突然スマホから声が出てきたり、さらに、「メール」「LINE」的な演出や、アプリからのお知らせが届く「プッシュ通知」を駆使した演出など、かなり凝っている。
 特に観客のスマホにある「連絡先」を駆使した演出などは、「おおおお」と思った。



 僕は前作を未見なのでよくわからないが、物語の後半の展開は前作から続いている話であることが示唆されているので、一応前作見ていた方がいいかもしれないが、それよりもとりあえず、このスマ4Dという仕掛け自体を、一度体験してみたらいいと思う。個人的には、結構可能性を感じる試みである。
 歩きながらスマホをいじってトラブルになる「歩きスマホ」が社会問題化されている時代ならではの、リアリズムをこのスマ4Dからは否応なく感じることが出来る。そんな「今」だからこそ、面白い仕掛けだと思う。
 こういう映画館だからこそ楽しめる仕掛けはもっとあってもいいかもしれない。星取りはスマ4Dの試みを込みで。


 あ、あと主演の瀧本美織は可愛かったです。僕の本名の姓は「アンドウ」なので、彼女が演じるキャラクターが安藤楓子という同じ読みの名字で、前作ヒロインの恋人役であったその兄貴も映画のキーマンとして出てくるのですが、「風立ちぬ」の菜穂子の声で安藤なんちゃらという兄貴に、「おにいちゃん」と呼びかけるたびにぐっときたりしました。<阿呆か。
 冗談はともかく、朝ドラ「てっぱん」でヒロインをやってた時は個人的にあまりピンとこなかったんだけど、本作では割と魅力的に映っていると思います。(★★★)