虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」

toshi202009-03-28

監督:長谷部安春 
原作:ハセベバクシンオー 
脚本:飯田武


 ドラマ「相棒」シリーズの脇役、鑑識課の米沢さんが抱えたある事件を描く、「相棒」外伝。


「相棒 劇場版」感想
 http://d.hatena.ne.jp/toshi20/20080501#p1


 ↑この感想を書いた頃、ドラマ「相棒」に関しての知識は知らないに等しい状態だったわけで。噂には聞いていたのだが、積極的に見てきたわけではなかった。映画化されるときも「ふーん」と思った程度だったわけだが。
 それで、ものすごく新鮮にその作品世界に触れたことで、劇場版を結構楽しく見てしまったわけで。
 その後、新シリーズを全話録画し、気に入ったエピソードを編集してDVD-Rに保存し、DVD-BOX(スリム版という安いやつだけど)を購入し、ゲーム版「相棒DS」を買ってしこしこ遊び、今ネット配信されているトリオ・ザ・捜一や米沢たちが登場するショートコント「裏相棒」を見てうひゃうひゃ言いながら笑っている、という程度にはたしなんできた、そんな昨今である<夢中じゃねーか。
 


 で。本作である。うん。見ました。公開されてすぐ、いの一番に見てしまったのでした<術中。


 ・・・で。どうだったか。

 うーん。


 話の発端は「自分の元から逃げた妻」がマラソン大会に参加していることを鑑識中に見つけた米沢が、彼女の居場所を突き止めたはいいが、結局会わずに去り、その後、そのアパートで彼の「妻」が死体で発見される・・・という発端で。
 その後、その「妻」らしき女性の「夫」を名乗る刑事(萩原聖人)と、なんの因果か共同戦線を張ることになる、という話なのだけれど。


 あの。これ、どうしても映画化しなきゃいけない話だったのでしょうか。言っては何なんですが、米沢守演じる六角精児にスクリーンを引きつけるだけの吸引力が感じられない。そもそも米沢守という人は、特命係の二人のような自分の信じるもののために組織をはみだすような行動を起こすことをしない、言わば「鑑識課」という枠内でこそ、彼のキャラクターが生きる側面があるわけですが。
 本作の眼目は、その米沢守に「特命係の真似事」をさせることが主眼となってしまっている感じ。


 だけどさあ、彼が彼自身の本分を投げ打ってまで、「捜査の真似事」をしていかねばならない、のならば、そこにもっと彼にとって劇的な「何か」がなくてはならないはずなのだよな。その理由付けが、正直なところ、いまひとつしっくりこない。「相棒」役の刑事の暴走に、巻き込まれていく作劇を取っているのだが、そういうところで米沢守が引っ張られていく理由が、あまり見えてこない。米沢に彼の「本分」を超えた行動を求めるには、ちょっと弱いと思うんですよね。


 「相棒」という「テレビドラマ」世界の枠内でこの映画は作られていて、そらファン目線から見たら楽しめる要素だってあるにはある*1のだが、それにしたって、映画らしい見せ場が少ない、というか、ほぼ皆無に近いのはさすがにどうなのか。地味なら地味でいいのだが、だったらもう少し脚本を映画らしく整理するとか、演出をよりタイトにキビキビとさせる、などの方法があったはずで、テレビドラマの泥臭さをなくす努力もせずに「映画です」って観客に出して金を取ろうだなんて、いくらなんでも「甘い」んじゃないの?物語の落としどころも、もうすこしどうにかならなかったのか。あんな理由で殺されたんじゃ、いくらなんでも、被害者が浮かばれなさすぎる。
 正直、「相棒」ファン以外にはまるでおすすめできない作品で、前作のヒットで気をよくして『映画」として売り出して金を稼ごうという魂胆の方がハナについてしまって、正直「こういうのはスペシャルドラマでやれ!」と思った。前作には感じられた「映画」をやるぞ!という意気込みが、本作ではまるで感じられないのは、前回の「劇場版」から作品世界に惹かれていったものとしては、大変残念に思う。(★★)

*1:トリオ・ザ・捜一の出番が多いとか