虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ワールド・ウォーZ」

toshi202013-08-14

原題 World War Z
監督:マーク・フォースター
原作:マックス・ブルックス
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン



 そもそもZとはなんなのか。マジンガーももいろクローバードラゴンボール。Zはいろいろあるけれど、この映画のZはなんかそういうのとは明らかにちがう。なんだ?Z。
 これがね、映画配給会社によって言っちゃいけないことになってるらしいんで、じゃあどうしようかと。「ハリーポッター」のヴォルデモートか、ゴキブリ嫌いの人にとってのGとか、まあ、名前を言ってはいけないあのZ。略称ならいいけど、みたいな。Z。なんだろうZ。世界大戦で、しかもZ。


 まあ、ゾンビです。ゾンビです、ええ。ゾンビだZ(ゼット)!


 パンデミック&ゾンビという合わせ技で、噛まれて10秒経ったら即Z。しかも、本人のポテンシャル以上の全速力で人を追いかけてきます。超こわい。映画が始まった時には「よーいドン」ですでに事態は進行してるという準備の良さで、映画が始まって数分でさっそくZと命をかけた鬼ごっこ開始です。はっきり言っちゃえば、地球規模の舞台でハンターが異様に増殖する「逃走中」です。しかも序盤は「家族を連れて」という無理ゲー。それをなんとか出来るのは、国連の元調査員くらいのものです。しかも中の人、ブラピですから、まあ、最強です。主人公補正どころの話じゃなく、そこにスター補正もプラスされて大変です。
 世界中みんなZになる。みんな大丈夫なのは空母の上くらい。経験豊かな元国連調査員だったジェリーは、危ないところを国連事務次長に救われ、家族と一緒にヘリで空母に来たはいいけど、「働かざる者生きるべからず」みたいな説教を受け、家族のために渋々国連調査員として復帰。「人類希望の星」と言われるウイルス学者とともに事態の原因を探る旅に出る。しかし、その目的は第一歩目からあえなく想定外の事態となる。


 まあ、情緒とか一切なしで、いきなり世界が混沌としていく中に放り込まれる、というスピード感に特化した序盤から中盤にかけての展開と演出が大正解。とにかく、早いは正義!多いは正義!と言わんばかりの圧倒的な展開の早さ、Z物量大作戦。それでいて、「ニンゲンって死ぬときはあっさり死ぬよねー」的な容赦なさと、「人類ってどこまでいっても愚かよね」という辛辣さもさらっと描きつつ、しかし、ブラピは。フィラデルフィア!韓国の軍空港!エルサレム!航空機!世界レベルで、爆発的に増えていくZによって大混乱の人々のうねりの中心で、アクションではどうしようもない部分での運命の力も借りながらサバイブしていく姿を、スター性を恃みながら描いてく割り切りは素晴らしい。


 この世界中大混乱なんで、後半この風呂敷をどう畳むのか。というところに興味が行くわけですが。この映画はどうするのか、というと。
 はっきり言えば、畳まない。


 本作だけで畳めるとは明らかに思ってないので、世界が土俵際ぎりぎりで俵ひとつ残して踏みとどまる策を、ゾンビだらけになった某所で探していく、という展開となる。
 この後半の展開だけみるならその前までと比べて、圧倒的に地味なのだが、ここへと至る国連調査員としてのジェリーの「洞察」、そこから導かれる「仮説」、それを「実証」するための「某所」と、きちんと段階を踏んでいるため、違和感がない。人類がほんの少し、「正気」と冷静さを取り戻し、いつか世界を人類の元へと取り戻す為の一歩を踏み出すために。
 ジェリーは某所の危険地帯へと足を踏み入れていく。


 そこで行われるZとの缶蹴り*1!だるまさんがころんだ!Z世界では子供の遊びも、オトナが命がけでやるんだZ!見つかったらその時はゾンビに攻撃だ!ブラピも「バールのようなもの」でZをぼっこぼこだZ!
 そして、決断の時。目的の場所で見せる、ブラピさんによる、渾身のフリップ芸!そこでボケて!・・・・ボケない!そらそうだ!
 「やっぱり神様なんていなかったね」*2的な世界の中で、血まみれにもならず、スター補正&主人公補正の運で乗り切り、職業的な才覚で人類の希望の種を勝ち取ったブラピさんが見たZな終末は、もちっとだけ続きそうなんじゃよ!


 この映画のZはドラゴンボールZの「Z」でもあるかもしれない。あ、大好き。(★★★★)