虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「茄子/スーツケースの渡り鳥」

toshi202007-10-24

監督:高坂希太郎 原作:黒田硫黄


 「茄子/アンダルシアの夏」の正式続編。DVD買って鑑賞。いやあ〜〜〜〜〜・・・・・


 面白かった!!!こんなに素晴らしい出来でOVAってどゆことよ!!!劇場で見たかった。
 (まあ、54分しかないからしかたないんだけどね。)


 というわけで、前作は比較的原作に忠実だったが、本作はもともとの原作の話にドラマ性が薄いため、本来脇キャラのチームメイト・チョッチが人生に揺れ動くドラマに、宮崎アニメ的日本人美少女のヒロインや、ロード大好き少年なども絡めて、大胆に肉付け。
 前作では、(兄貴に恋人取られた)傷心を抱えてのレースだっただけに、終始重いキャラだったペペ・ベネンヘリが、今回は準主役に回ることで、本来の陽性キャラを発揮している面白さ。「カリオストロの城」のルパン並みにコロコロ変わる表情が楽しい。大泉洋の使い方としても申し分ない。
 そして、今回の主役・チョッチは同郷の国民的英雄・マルコの自殺で、レーサーとしての人生に疑問を感じながらも、日本へ遠征にやってくる。来年無くなるパオパオビール。選手を続けるか否か。選手を続けるためには、他チームにアピールするためにも、勝つしかない。だが、チョッチは苦しい選手生活に疲れていて、それにマルコの死が追い打ちをかけていた。



 勝つ奴にはオーラがある。俺たちにはオーラがない。



 そう言って、ペペに引退する意志を告白するが、ペペは勝つことしか考えない。
 人生の行方はレースが決める。ドラマとしての味付けは前作と似ているが、今回は故国ではなく、「異国」のレースで答えを探していくってところが味噌で、その「異国」が日本、ってところがアンビバレントな感じで面白い。しかもレース展開的にも、前回が「逃げ」のレースだったが、今回は「追い」に回っている。つまり前作では「遠くへ行きたい」という「苦しみからの逃走」だったが、今回は過去の残映を「追い切る物語」である。
 そして今回、主役、準主役を喰う勢いで存在感を発揮するのは、世界的英雄・ザンコーニ。口数は少ないながらも、ただ者ではない雰囲気の出し方、そして原作の山場wともいうべき「早すぎたバンザイ」事件も、ものすごい迫力で映像化していて大爆笑。泥のようなオーラを称えて走るその迫力はまさに「別格」の貫禄で、最後のオチに大変な説得力をもたらしている。


 コロコロ変わる天気、悪化する路面状況、日本の公道レースならではの複雑な地形を見事にアニメとしてリアルに落とし込んでいて、そこから生まれるアクシデントなど、原作にはない詳細なレースシーンも作り込んである。レースだけでも楽しめる出来映えで、大興奮。CG技術が上がっていることもさることながら、作画レベルも劇場公開した前作をもしのぐパワーアップぶり。
 クライマックスはチョッチとペペの共闘で先頭集団を追いつめていく。勝つために。そしてチョッチを勝たすために。ペペは、あえて前を引き続けて、苦しい「風よけ役」を買って出る場面は感動!


 高坂監督の演出力は前作に優る冴えを見せていて、躍動感も迫力も増している。なによりも主役が追い上げる展開は、逃げ切る快感とはまた違った意味での快感で、しかも前作では孤独だったペペは、今回見事な共闘でチョッチとの絆を感じさせる。前作で勝たせなきゃいけないギルモアを置いてアタックしかけた選手とは思えない(笑)。ペペの選手として、そして人間としての成長も踏まえると、続編としても一本の作品としても素晴らしい出来映えであったと思うのです。
 高坂監督、次作は是非、長編アニメーションで勝負してほしい。いやほんまに。大好き。(★★★★)