虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ワルボロ」

toshi202007-09-12

監督: 隅田靖
原作: ゲッツ板谷
脚本: 木田紀生


 ゲッツ板谷氏の不良小説の映画化。


 どうもゲッツ板谷さんというと、サイバラ漫画で登場する、金角銀角の金角さん、というイメージで俺の頭の中で固められていて、もっとこう破天荒なイメージがあったのだが、中学生時代のナイーブな時代があったんだぜ、的な青春物語になっていたりしてへーと思う。



 舞台は80年代の立川*1


 もともと小学生時代からガリ勉で成績優秀、優等生の板谷くんが不良になる、そのきっかけはおさななじみのヤッコの授業中のイタズラにおもわずブチきれたことで受けたチョーパンで、それのやり合いが気持ちよくなって?、不良の道へ入り込む。不良の少ない南三中でヤッコを慕って不良になったのは6人。彼らは錦組を名乗り、他の高校とはつるまない、という中立(彼ら言うところの「狼の群れ」)の立場を貫こうとするが、不良になれば憧れの優等生・山田(新垣結衣)は完全無視するし、かあちゃんは怒るし、他校の不良から喧嘩売られる。
 新興の弱小勢力、頭にいるヤッコは中学生にして一本気を貫く。基本的に勢力拡大はしないで楽しくつるんでるのだけれど、当然中小のグループからは狙われる。巨漢の男・毒ブッチュが仕切る南十中に目をつけられたり、朝鮮学校の生徒に手を出して彼らの仲間100人以上から追われたりするが、少数精鋭の北六中と意気投合したこともあり、なんとか乗り切っていくのだが・・・。
 ある日、鑑別所帰りの男が北二中をシメ出したことから、立川の勢力図が一変。決して一枚岩とは言い切れない錦組にも、大勢力と化した北二中の魔の手が伸び始める。


 中村トオルがやくざのおいちゃん役で出てきたりするが、別に東映が不良路線を復活させた、というわけでじゃなくて、「パッチギ!」の懐古不良路線の成功があるのは間違いなく、80年代の懐古青春グラフティ的。
 演出は丁寧なのだけど、大きくはみ出さない印象。基本的にドラマに深みがあるわけではなく、「不良ほど素敵なショーバイはない」的な、「やっぱ俺、勉強より喧嘩が好きっしょ」「仲間のためならがんばれる」的なモチベーションの保ち方。生まれながらの不良ならそれでもいいけど、元優等生という主人公のキャラが、あまり活きているとは言い難いのが惜しい。。
 新垣結衣演じる憧れのマドンナは主人公の思い人である、という以外の役割はあんまり振られず、基本的に物語の蚊帳の外にいたりするので、扱いとしてはどちらかというと脇役に近い。彼女の心の変遷は詳しく描かれず、ドラマ的にもあまり印象的なシーンは少ない。病院での主人公への叱咤も、唐突に見えてしまうし、優等生だけど芯は強い、という感じよりも「かよわい」イメージの演技なのも、違和感のもとになっているのかもしれない。はまり役、という印象はなかったな。でもガッキーかわいいから許す<それでいいのか。


 基本的に錦組は、立川勢力図の最弱中立勢力だから見逃されていた、という経緯があるせいもあって、あまり不良が受ける「負の部分」よりも、幸運にも生き延びて楽しくつるんでいた、楽しげな「友情」場面の方が強調されている。ほんとに酷い目にあってるのは「他の勢力にいる奴ら」で、錦組自体はハードコアな目には遭ってない。そこが一般向けさわやか映画としてなんとか成立している要素でもあるのだろうけど、その分口当たりはちょっと苦みが足りない感じがしたかな。
 もっと不良になることへの葛藤や痛みが感じられたなら、もっと熱い不良映画になったろうになあ、とその点が残念かな、というところです。(★★★)

*1:なんかやたらと立川dis(愛情込みなんだろうが)が続くのだが、共感するのか怒るのか、立川市民の反応が見たい気がする。