虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「Gガール/破壊的な彼女」

toshi202007-02-11

原題:My Super Ex-Girlfriend
監督:アイヴァン・ライトマン 脚本:ダン・ペイン
公式サイト:http://movies.foxjapan.com/Ggirl/


 俺にとってこの映画を監督したアイヴァン・ライトマンという監督は、かなり思い入れのある人で。
 俺、昔はそんなに映画に没頭していたわけでもないから、たまーにレンタルビデオで見るくらいで、年に両手に余るくらいしか映画館に行かなかったんだけど、そんな昔の俺がね、たまたま興味持って見に行った映画が「デーヴ」という映画で。その監督をしていたのがアイヴァン・ライトマンでね。
 以前、息子のジェイソン・ライトマン監督の「サンキュー・スモーキング」の感想でも書いたけど、その「デーヴ」が俺は超がつくほど大好きで。もう。俺の映画鑑賞人生の中でもかなり重要な位置を占めている作品で。そんな俺だから、偉大な父親の遺伝子をイイ風に受け継いだクリエイターの産物、的な感じでね、「サンキュー・スモーキング」の感想に書かせていただいたんだけれども。


 でも、ここ最近になってようやく思い知ったけど、アイヴァン・ライトマンって、映画ファンの中ではそんなに評価高いわけじゃないのね。どっちかっつーと、「ヌルいコメディばっか撮ってる監督」って評価なんだな、と。俺の中ではもう「デーヴ」撮った時点で「あんたすげー天才」なんだけど、彼のフィルモグラフィを見返すと、監督としての最近作が「エボリューション」という、まあ、成功か失敗かと問われればまあ、限りなく「失敗」に近い作品で。大作は大作でも「底抜け」がつくほうですけどね。
 で、考えたのは。かれは良くも悪くも「職業監督」なんだと。だから、脚本にものすごく左右される。脚本が良かろうが悪かろうが、それを如実に反映してしまうのだと。「デーヴ」は、考えてみると後に「シービスケット」を撮るゲイリー・ロスの脚本が素晴らしかったのであって、アイヴァン・ライトマンはその良さをたまたま引き出しただけなのだと。
 あーそうかー、などと思ったりして、うなだれたりしてたんだけど。その彼の最新作をね。見たわけですけど。まあ、聞こえてくる評判は、まあ、そこそこ面白い、的なね感じでね。ま、「エボリューション」撮った監督にしちゃ良くやったんでねーの的なね、感じで。こちらとしてもそんなに気構えないで見ますわね。これがですね。


 傑作。大傑作。俺の中ではもう、アイヴァン・ライトマン株、大復活ですよ。


 いや、もう最高だね。「スーパーマン・リターンズ」見て、まあ、良くできてますけどね、そのまんま過ぎて、思ったよりいまいち、みたいな反応だった俺が、どっちかっつーとパロディであるこっちで感動したもん。笑って笑って笑い尽くして。最後うっすら泣いた。古典を古典のままキレーに出すんじゃなくて、お約束ごとをきちんと踏襲しながらも、きっちりそこに笑いを絡める方が、俺の中では上にくるんだなー、と思い知った。


 何がイイってね、この映画はね、脚本がいいんですよ。本当に良くできてると思った。


 いい感じで生々しいんだな。メチャクチャもてるわけでもないけど、まったくもてないわけでもない主人公を、平均的な凡人を演じさせれば当代随一のルーク・ウィルソンが演じてて。職場にあこがれのマドンナがいるんだけれど、彼女は別にカレシがいて脈がなさそーだってんで、友人に言われるまま地下鉄でひっかかけた地味目の女(ユマ・サーマン)と付き合い出すんだけれども、これが実は意外と美人で夜は激しくてこりゃいい、みたいな感じでのめり込むんだけれども、彼女は昔いじめられてた反動か嫉妬深すぎて暴れたり、ヒステリー起こすもんだから、振ったらそこから嫌がらせが始まって、みたい話で。まあ、下手すりゃホラーになりそうな話なんだけれども。
 そんな女に「スーパーヒーロー」の要素を絡めることで、見事にコメディとして昇華されてて。嫌がらせ始めるユマ姐さんは確かに怖いんだけれども、その嫌がらせがかなり大胆かつ豪快なので、嫌みにならないところがミソで。そもそもスーパーヒーローは結構普段は孤独だったりするから、思わずストーカーしちゃったりする要素があるんだけれども、女性だから余計行動に歯止めがかからない、みたいに、ヒーローの変態属性を見事にパロディにしたみたいなところがあるわけ。
 さらにこの映画がすごいのは、ヒーローもののお約束の、ボスの親玉とスーパーヒーローの因縁をもパロディ化してしまったところで。実は高校の同級生で似たもの同士。お互い憎からず思ってたんだけども、彼女の方がスーパー化しちゃって、残された方はいじけて悪の道へ、みたいなね。


 で、最終対決については言わないけど、これがもう、腹抱えて笑った。この展開、燃えないわけねーよな。みたいな感じで。どんどん深みにはまっていく修羅場な展開になってて、うわーこれどうすんだ、などと思ってたら最後キレーにハッピーエンドになっちゃって。「おおおおおおお!」みたいな感じですよ。巧い。巧すぎる。
 脚本書いたダン・ペインはこれがデビュー作らしくてさらに驚いたけど、とんでもない才能だな、と思ってたら、なんと彼の次回作が「ファンタスティック・フォー」の続編で。うわー、起用した人間わかってるなー、と思いましたよ。


 というわけで、アイヴァン・ライトマン作品としては、「デーヴ」以来の大傑作なんで★5つ。これからはいい脚本を選んで映画を作って欲しいと思います。・・・息子の脚本とか、どう?(★★★★★)