虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「オープン・シーズン」

toshi202006-12-11

原題:Open Season
監督:ジル・カルトン /アンソニー・スタッチ /ロジャー・アラーズ


 山あいの静かな町、ティンバーライン。優しいパークレンジャーのベスに育てられたクマのブーグは、大きな体に似合わず甘えん坊。温かい部屋、柔らかいベッド、おいしいご飯…。人間界の快適な生活を満喫していたブーグだが、町に迷いこんだシカのエリオットに乗せられて騒ぎを起こしてしまい、森に返される事に。


 オープン・シーズン。つまり狩猟解禁の意味なんですな。母親代わりとして熊を育ててきた人間の女性と熊の、暖かい交流の日々。だが、別れの日はやってくる。人間社会に慣れた熊が森に放たれる。しかももうすぐ狩猟シーズン。はたして熊は森で生き残れるのか。そして人間の脅威にどう立ち向かうのか!!


 はらはらしますねえ。どきどきしますねえ。


 ところが、いまひとつ物語としてのカタルシスが薄い。
 女性と熊との交流はわりと細やかに描かれていると思ったんですが、熊が街から遠く離れた森に放出されてからの展開とぷっつり途切れてしまうんですな。人間の文明と森の動物たちの、避けられない対決がクライマックスであるにも関わらず、両者の社会構造の描写がおざなりなために、カタルシスが極めて薄い。
 熊のブークとシカのエリオットの友情や、ブークと森の動物たちの関わりも非常に平板な描写に終始。なんとなくその場のノリを描いて、友情描きました、交流を描きました、で終わってしまっているので、物語の土台ができてないのに、次々と物語を進めてしまう乱暴さを感じてしまう。
 悪役であるショーの造形も、あまりに頭悪すぎて、リアクションに困る。「森の動物が人間を支配しようとしてる」という妄想を本気で信じて動物を狩りまくってる、って設定は、いくらなんでも斬新すぎるわ。体育会系=頭が弱い、というキャラづけは別にかまわんが、頭の悪さにも限度ってものがあると思う。
 ブークも成長したようにはとても見えず、友情の描写も浅い。総じて映画全体を見ると・・・



 ダメ息子とダメ母がいて。でネコ可愛がりはしたはいいけど、息子はわがままでひきこもりでになった末に、増長してしまったので、更正施設に入れたら、いじめられる日々だけど家に帰るために頑張って、なんとか施設の仲間と友達になったので、「もう少しここにいるよ。母さんぼく頑張る」というので、母さんも「そうかいそうかい。がんばりなされよ」と・・・・


・・・などという「親馬鹿子馬鹿」話に見えてしまったんですけど。この物語のシチュエーションから生まれる、森と文明が如何に関わるか、という命題に真剣に取り組めば、もっと深い話に出来たはずなのに。全体的に浅いだけの話になってしまったのは、もったいない。
 キャラクターの造形は可愛く出来ているので、子供たちには受けが良さそうなのが救いなんだけどな。それゆえに志の足りなさが惜しい。(★★☆)