虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ラフ」

toshi202006-10-13

監督:大谷健太郎 原作:あだち充 脚色:金子ありさ


 スポーツ特待生。日本で二番にクロールが早い高校生。肉体がもこみち。もてねーわけがねえ男が主人公。その男にいきなり「人殺し」と言って絡んでくる女がひとり。彼女の正体は・・・・。


 実は血のつながってない人を「おにいちゃん」と呼ぶツンデレブラコン女だったのです・・・・。


 というわけで、「タッチ」に続き長澤まさみ主演でおくる、あだち充映画化第2弾。


 基本的にスポーツエリート同士の恋のさやあて話なんだけれども、もこみちくんの大根朴訥としたキャラクターや、ヒロインとの子供っぽいやり取りが不思議とエリートっぽくなくて、結果的にパンティをうっかり拾ってどうのとか、うっかり触れあっちゃってどっきり、みたいなベタベタなシチュエーションも不思議と違和感がない。
 現在の映画化ながら、微妙に現在の意匠を避けて、ノスタルジーな小道具や画づくりを志向して、時代設定の差異をうまくすりあわせたりと、犬童監督よりうまくあだち作品を、映画としてうまく落とし込んでいるな、という感じ。大谷監督の「NANA」を撮った経験が生きている。しかもさりげなく、「NANA2」のために市川由衣を試用したり、第6回東宝シンデレラを配したりする抜け目なさ。
 なにより、サービスカット満載。露出度が高いけどエロくなりすぎない水着姿を披露する長澤ほか、市川由衣の競泳用水着直す仕草を入れたり、田丸麻紀に食い込みきつい水着を着せたりしつつ、しかも、カメラの捉え方がエロいエロい。まずは眼福。


 ま、それはともかく意外にも、映画の方はがっちりとした三角関係のラブストーリーをベースに、そこに主人公と同室の友人との友情を絡めて、意外と振れ幅がある。しかも、その友人が主人公にする忠告が、あだちキャラへのセルフツッコミになってる*1あたり、ニヤニヤしてしまった。
 さらに、主人公の恋敵であるヒロインの「おにいちゃん」こと仲西(阿部力)がすごくて、主人公と日本一を争うライバルで、車で事故って選手生命絶望かと思わせておいて、驚異的な回復力で1年でリハビリ、特訓、そしてさらなる記録更新をするという、凄すぎる男。しかも、そこまでした理由が「ヒロインに事故の責任を感じさせない」ため、などと平気でさらっと言う。かああっこいいいいいいい!一瞬惚れかけました(えー。

 さらに、競技シーンでのキャストとボディダブルとの入れ替えもほぼ完璧に編集してあって、違和感を感じさせない。それらのシーンをうまいことドラマに乗せることで、このスポーツエリートのラブストーリーを、キャラクターと観客の心に近づけていくことに成功している。あだち充映画化作品の佳作。(★★★)

*1:平たく言えば「苦しいくせにスカしてんじゃねーぞ」だし