虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「マッチポイント」

人生のマッチポイント

監督・脚本;ウディ・アレン


 主人公は世界的なテニス・プレイヤー。だが、限界を感じ、引退。会員制のテニス・コーチとなる。人の良さそうなルックスと人当たりのよさで、富豪の御曹司のお気に入りとなり、彼の妹と昵懇となり、順調に交際。彼らの家に招かれた主人公は、そこでちょーセクシーな女性と出会う。それは御曹司の婚約者であった。



 すげえ。何がって、主人公のセックスに対するバカ正直さが。もうウディ・アレンがのスカーレット・ヨハンソンと「やりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたい・・・」という妄想の無限ループが主人公を追い込んでいく、というすごいわっかりやすい映画で。ある意味、ウディ・アレンにとって真っ正直な映画。

 あまりに順調な人生におとなしくのっかってりゃいいものを、あまりにヨハンソンとヤリたくって愛人として囲ってしまったあげく、ヨハンソンが重荷になって殺そうとする・・・って、お前は「刑事コロンボ」の犯人か、というくらいのベタベタな展開を、哲学的な運/不運をめぐる不条理劇として観客をだまくらかして展開させていく。
 もう、主人公が正直すぎて笑える。富豪の娘との結婚によって手に入れた地位・財産・恩恵にはしっかりノリながら、セックスやりたいがために会議すっぽかそうとしたり、義兄夫妻と食事中にヨハンソンとの話題になり、その後、彼女の家のご近所で主人公を見たという友人に対して必死に否定したり、ヨハンソンとやりまくってるせいであからさまに奥さんとセックスレスに陥ったりして。そんでもって、彼女が妊娠したりすると、あからさまに逃げ始める。この辺、かなり笑えるのだが、声を立てて笑ったのは劇場で俺ひとりであった。なぜだ。


 決して出来が悪いわけではなく、むしろ上出来に位置する映画なんだけど、オチが。ええええええ!これで終わりか!という幕切れに愕然。常道をハズした皮肉のつもりなんだろうが、俺にとっては最悪の結末だった。運・不運以前の問題だ。罪と罰の、罰を与えられなかった男の悲喜劇としてニヤリ・・・とは全然思えなかった。言っちゃなんだが、「完全ヤリ逃げじゃねーかこの野郎」という、身勝手な主人公への怒りの方が勝った。最悪すぎるわ、バカタレ。同情なんてできるか。死ね。死んでしまえ。ふざけんな・・・という意味で★ひとつ。ウディ・アレンの暗黒面発動のチン作。(★)