虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「劇場版NARUTO−ナルト− 大興奮!みかづき島のアニマル騒動だってばよ」

toshi202006-08-06

監督・脚本:都留稔幸
公式サイト:http://www.naruto-movie.com/


 第1作の気合の入った映画っぷりに感動して以来、見続けている劇場版「NARUTO」第三弾。毎年監督(&脚本)が変わっており、第1作が岡村天斎(「MEMORIES/最臭兵器」)、第2作が川崎博嗣(「スプリガン」)と、奇しくも大友克洋関連作に関わってきた2人が担当していたが、今年は「最遊記」(未見)の都留監督が登板。



 今回の任務は「みかづき島」にある“月の国”の王子を守ること。“月の国”は大変に裕福な国。その王子は今、旅の真っ最中。ナルト、カカシ先生、サクラ、ロック・リーの4人に与えられた任務は、王子とその一行を無事に「みかづき島」まで連れて帰ること、である。
 金が有り余っていることもあって、王子の息子がサーカスの動物が気に入ったからと言えば、サーカスごと買い取ってしまうという、成金みたいな金の使い方をする王子一行。王子はかつての奥さんとヨリを戻しに、彼女の実家へと出向き彼女と会うが、結局「あなたは大事なものがわかってない」とはねつけられてしまう。
 一方、王子の息子とナルトも反目。息子の態度に思わず手を出してしまい、縛り上げられるナルト。島へと向かう船旅の途中、嵐に会った際、「飽きたから動物なんかいらない」と言い放った王子の息子とついに大喧嘩となるが、結果的に彼らは理解しあい、友情の契りを結ぶ。


 だが(例によって)月の国では、思いもかけない陰謀が待ち受けていたのであった。ちょんちょん。



 ・・・というわけで、本作のおおまかな流れは、第1作のそれに近い。王家の人+エンターティナー+クーデターと反乱軍という構図など、共通点は多い。ナルトたちの友情、「あきらめない」大切さ、というシリーズの基本線を踏襲した物語もあいからず直球で気持ちがいい。王子の息子とナルトたちの交流の描写も、いまどき珍しいほどまっすぐだ。


ただ、物語は第1作に比べるとやや煩雑になってしまった感がある。王子の息子とナルトの友情が軸になるかと思いきや、いい年齢の王子その人の成長物語まで絡めようとするのだが、この王子、やればできるという以前に「政治意識」すらない愚鈍っぷりな上に、老王が王子を旅に出した理由が「クーデターを察知したから」という、あんまりな理由だったりする。さらに、その老王の敷こうとした政治ってのがなんとも現実味にとぼしく、クーデターの黒幕いわく「老人や恵まれない人に施設を作ろうと言い出すわ、そのくせ税率は下げろ」ということをしようとしていたらしい。「ああ、確かにそらだめだ」と思ったよ。
 この黒幕、結構まともな気がするの俺だけ?「金、金、金」と言ってるから汚く聞こえるけど、実際ないよりはあった方がいいのだ。福祉を充実させようとするならそれだけ金は必要になるわけじゃん。愛想尽かしてクーデター起こしたのもなんとなく納得しちゃったよ。いや、納得しちゃだめなんだけど納得させるなよ、俺を。
 あと、金が大事という男がクーデター起こしたのに町がさびれる描写が入るのは理に適わなくないか?それならもっと街を栄えさそうとするんじゃないの?第一、庶民の一人でも出して、「王子」政権待望論でも聞かせてくれるのかと思ったらぜんぜんなし。結局「老王」が「王子」の「世襲」を望んでたから、反乱しよう、という流れになっちゃうのが、すっげー腑に落ちない。



 「守るべきもの」のために、ナルトたちがどん底から這い上がる演出や、クライマックスの「肩車螺旋丸」なんかの演出はすごくいいのだけれど、肝心のドラマのほうがいまひとつ深みにかけるので、それらの演出もなんとなくご都合主義にみえちゃうのが、まっことにもったいない。
 せっかく少年たちの「友情」という軸を持たせのに、王権云々の話を絡めたのはかえって「友情」の要素を薄めてしまう結果になってしまった感じがする。王子も、「王座なんかいらないから、悪政を敷く黒幕を倒す!!」くらいの捨て身が欲しかった。「漁夫の利やんけ」と思わせちゃいけないよな。俺に。(★★★)