虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「リアル・スティール」

toshi202011-12-10

原題:Real Steel
監督:ショーン・レビ
原作:リチャード・マシスン「四角い墓場」
原案:ダン・ギルロイ、ジェレミー・レビン
脚本:ジョン・ゲイティンズ



 色々な意味で楽しかった。非常に古典的な娯楽作でありながら、すごく「今」な感じの映画だと思う。


 えー、さて。関係ない話から入る。


 自分が学生時代は、対戦格闘ゲームの全盛期だった。「スト2」シリーズで土壌が作られ、「バーチャファイター」や「鉄拳」から裾野が爆発的に拡大して、強いプレイヤーが英雄になった時代。自分は決して強くはなかったけれど、池袋や秋葉原のゲーセンなどでその闘いを遠巻きにしながら見て、スキを見て対戦してぼっこぼっこにされてまた観衆に戻る、みたいなことを繰り返していたこともあった。


SEGA AGES 2500 シリーズ Vol. 16 バーチャファイター2

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鉄拳ハイブリッド - PS3

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 ちょうど同じ頃、もう一つの潮流が携帯ゲームで出てきた。「ポケットモンスター」シリーズの爆発的ヒット。これに関して自分がいわゆる「セガ信者」(セガが作ったテレビゲーム機を偏愛する人)だったのも手伝ってボクとは全くの無縁なのだけれど、モンスターの育成・交換という要素が受けて、テレビアニメ化されるといよいよ社会現象化していく。


ポケットモンスター ブラック

ポケットモンスター ブラック

ポケットモンスター ホワイト

ポケットモンスター ホワイト


 格闘ゲームブームとポケットモンスターブームは同時期に発生しながらも、世代的にちょうど交わらないところに存在したのではないかと自分では思う。格闘ゲームにハマっていた世代はポケモンに時間をかける人間は少なかったろうし、逆にポケモンにハマっていた世代は保って数分で100円玉が消えるアーケードゲームに延々と費やす経済力などなかったろう。

 それから10年以上の月日が流れての今である。格闘ゲームに群がっていた社会人や学生はすっかり中年になり、ゲーセンからはとっくに卒業して、家庭を持って社会の歯車になったりなってなかったりしてる。
 そんな時代に、この映画である。


 時は近未来。人間同士による格闘技はすっかり廃れ、より過激な「破壊」を求める観客はロボット同士の格闘技を観戦する時代になった。主人公・チャーリー(ヒュー・ジャックマン)は元は優秀なボクサーだったが、時代の流れに逆らえず、かといって格闘技以外の転職も考えられず、リモコン操作する「格闘ロボット」のトレーナーとして、ドサ回りしながら日銭を稼ぐ日々。
 しかし、なけなしのロボットを壊されて、いよいよ首が回らなくなってきた時、かつての妻の訃報と、彼女との間に出来た息子・マックスの養子問題の話が入ってくる。元妻の妹夫妻がマックスを養子に引き取りたいと申し出てきたことで、チャーリーは義妹の夫に1ヶ月息子を預かる交換条件として、ロボットを買う資金として50万ドルを要求し、相手はそれを飲む。まー、父親としては相当のクズです。
 マックスは聡明なので、それをすでに理解しており、実父であるチャーリーに反抗的な態度だったが、廃品置き場で見つけた旧世代型ロボット・アトムをマックスが拾ったことが、二人の関係を大きく変化させるきっかけとなる。


鉄人28号 白昼の残月 DVD

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鉄腕アトム(1) (手塚治虫漫画全集)

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 この映画は、なんというのかな。親子の成長物語として見ると、実はあまり納得いかない点が多々出てくる映画だとは思うんです。クズ人間がそう簡単に変わりはしないよ、と達観すら感じられる。ただ、この映画のうまいところは、いくつになっても「男の子」は、格闘とロボットが大好きなのだ!という非常にわかりやすいカタチで、10年ぶりにある「大きな子供」と「小さな子供」が出会って、一気に意気投合していく様を描いていく。
 親子としては、実はあまり現実問題が解決していない二人ですし、父親としての成長を望むべくもないのですが、育成型ロボット「アトム」を手に入れた二人は徐々に「彼」の育成にのめり込んでいくことで、「男の子」同士の友情が芽生えてくる、という話になっていく。


 この映画は、ゲーム的にも断絶した世代をも見事につなぐ映画だと思うのは、格闘ロボットの仕組みが「一定の動き」を「コマンド化」し、「技」を「入力」したり音声認識で「叫ぶ」ことでコントロールする点。言わば「必殺技」を「コマンドエディット」が出来る「アトム」という名前の「鉄人28号」が、「格闘キャラクター」として「育成」できる喜びですよ!
 息子はロボットを「育成」し「プロデュース」していくことに生きる喜びを見いだし、親父はアトムにかつて青春を費やしたボクサーとしての「技」を教えることで、ボクサー時代に持っていた人間としての輝きを少しずつ取り戻していく。


 親子としても、人間としても断絶していた二人が、「共通して熱狂できるもの」を通して友情を育み、「子供」の問題を母親に押しつけていたクズ親父が、息子との「友情」をとおして人間性を回復させるまでの映画として見ると、非常にウェルメイドな後味の映画だと思います。
 かつて「格闘ゲーム」にハマりこんだであろうオヤジ世代と、「ポケモン」にはまり込んでる息子さんが一緒に見に行くと、映画が終わった後に2人の「男の子」として「楽しかったねー」と笑いあえる映画だと思いますので、親子で見に行くとなおイイ映画だと思いました。できれば祖父世代が「鉄人28号」を思い出しながら、その輪に加わるとなおいいですね。(★★★★)