「シュレック3」
原題:Shrek the Third
監督:クリス・ミラー
脚本:ピーター・S・シーマン、ジェフリー・プライス 、クリス・ミラー、アーロン・ワーナー
えー。はじめに書いておきますが。本シリーズ未見の方は、前作、前々作予習必須です。基本的に前作のネタバレからスタートする上に、トリッキーな結末が2回続いてわやくちゃになった世界観を理解するのに時間を要する可能性があります。逆に、予習さえしておけば、基本的にシンプルな話なんですが。
でまあ、今回の話なんですが。シュレック自身のドラマは、フィオナが妊娠しちゃった、どうしようー、という葛藤がメインです。できちゃったシンドロームに陥ったシュレックがそこから立ち直る、という。今回、彼はその悩みが主で、全体としてみると明らかに脇役だったりします。
今回、シュレックがやったことを冷静に振り返ってみると、「かえる」王が崩御したことで王国を継がされそうになった彼が、お城勤めから逃れるために王位継承者を迎えに行って帰ってくる「だけ」なんです。
もともとカッツェンバーグ氏が私怨でディスニーを徹底的にコケにするため「だけ」にはじまった、と言っても過言ではないシリーズだけど、「1」の頃とはディズニーとの力関係などの状況がすっかり変わった上に、トリッキーなストーリーのせいで世界観がめちゃくちゃになってしまい、ドル箱シリーズとしてうまいこと長期シリーズに持っていこうと、とりあえず両生類と怪物が国を治めているというかなり異常な状況を一旦、「正常なかたち」に戻したい、という「大人の事情」も見え隠れします。
今回のメインは、前作で落ちぶれた屈辱を胸にクーデターを起こすチャーミング王子の「復讐」と、いじめられっこだったのにじつはあたしったら王位継承者、な「プリティ・プリンス」*1こと、アーサーくんの成長だったりします。自らの復権をもくろむイケメン悪役と、正統な王位継承者である全然イケてない王子*2の対決、という形をとることで、なんとか収拾をつけようとします。
ドリームワークスの躍進と、ディズニー本体の弱体化にともない、毒もやや薄めになっていますが、シリーズとしてキャラクター自身の面白さで乗り切ろうとするあたりは、逆にコメディとしてあるべき姿にようやく回帰したとも言えます。この辺は、シリーズの蓄積がいい方向に出ていたと思いました。アンチディズニーのギャグはあれど、全体的にはくすぐったい感じに抑えている辺りはシリーズの成熟といえるのかもしれません。
ただ、いかんせんもともとの世界観が「いいかげん」なので、全体的にこじんまりとまとまりすぎた感も否めません。
個人的には、落ちぶれたチャーミング王子にかなり「母性」をくすぐられて、結構感情移入しながら見ていたので、彼が結局単なる悪役として終わってしまったのは、残念でした。彼の使いようによっては、かなり面白くなったのではないか、と思うのですが。彼の「めでたしめでたし」は「4」以降に期待、ということになるのでしょうか。(★★★)
*1:うまいことに女王さまがジュリー・アンドリュースw
*2:いっそブサイクにすりゃよかったのに