「ダーク・ウォーター」
原題:Dark Water
監督:ウォルター・サレス 原作:鈴木光司
うーん。こういう映画だとは。
いや、監督が監督だし一筋縄ではいくまいとは思っていたんだが…。もしかして、これ、ホラーじゃなくね?
いや、一応話としては「霊魂」「怨霊」の類の話ではあるんだが、ウォルター・サレスは、なんつーかホラーマインドらしきものがあまり無くてですね。陰鬱な雰囲気が終始垂れ込めた、躁鬱シングル・マザーの人生そのもののような、くらああいフィルターを終始かけつつ、超常現象の描写も、登場人物の心理と霊的現象をシンクロさせていく、という方向性に作品を持っていく。
ホラーとしての体裁は整えつつも、あくまでも、救われなかった魂と一人のシングルマザーの葛藤に物語の重点を置いて演出していて、それはそれで見ごたえがあるんだけど、そうなるとどうにもラストが納得いかないんですよ。
つーか、元になった「仄暗い水の底から」を見てないのでなんとも言えないけど、冷静に考えると恩を仇で返された、みたいな、理不尽な話でさ。こういう話をまっとうに演出しちゃうと、かえってそういった面だけが浮き彫りになっちゃうんだよね。
こういう話でも、ホラー演出がなされればこそ、理不尽なオチでもそれなりに納得がいくわけだけど、こうしっとりと理不尽さを提出されると、戸惑いのほうが大きくなる。ラストで「え?そういうオチ?」と拍子抜けする俺がいましたよ。
ジェニファー・コネリーのシングルマザーの苦悩を体現した情感的な演技や、子役の女の子の愛らしさも素晴らしかっただけに、ホラーの枠組みを中途半端に残したがゆえのどうにも踏み込みの甘い結末がなあ。傑作になりうる資質を持っている作品だっただけに、この中途半端な後味はもったいなさすぎる。(★★★)
公式サイト:http://darkwater.jp/