虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

真実の「夢」を求め、僕らはホワイトハウスへ飛び立った(はずだった)

toshi202005-06-15




 「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」を見た。


 この映画、AAで表現するならこんな感じ。


          /⌒ヽ
   ⊂二二二( ^ω^)二⊃
        |    /       ブーン
         ( ヽノ
         ノ>ノ 
     三  レレ

('A`)。o○
ショーン・ペン



 1974年。一人の男が駐車場から空港へと入っていく。その一週間前、オープンリールに、自分の独白を吹き込んでいる彼がいた。彼はある大それた計画を思いつき、密かに実行しようとしていたのだ。その男は何故、そのようなことを企むに至ったか。


 えーまーなんつーか。実話を元にした、ある社会不適応者の悲劇である。
 いや、本当は別に悲劇でも何でもなくて、単なる喜劇だと思うんだが、この映画のシナリオを「怒れる左派男優」ショーン・ペンに送ったのが運の尽き。恐ろしく真面目に、この駄目男の運命に入れ込んだペンが渾身の演技を見せ、希に見る間抜けな悲劇映画が出来上がってしまった。
 主人公のサムは43歳にして、ある事務器具の販売員になった。彼は、就職した端から喧嘩別れして会社を辞めていて、それが原因で奥さんのナオミ・ワッツとは離婚寸前の別居状態。彼女の信頼を取り戻したくて再就職したのだが、社長の俗物めいた演説にうんざり来ていて、いつもの「辞めたい」ぐせが出る。それを愚痴るのは彼の親友でいずれ一緒に独立しようと言っているドン・チードルであるが、彼も時折サムの幼稚な自己顕示にいらついている。
 セールスマンとしてもオチこぼれ、止せばいいのに元奥さんに未練たらたら、才覚無いのに夢を追いかける。彼は言う。「俺には怒る権利がある。俺は権利を手放す気はない。」彼は常に状況にいらついている。いらつく火種が多すぎる彼は、ついにはその怒りの矛先を、アメリカの制度そのものへと向けていき、狂気の妄想へと身を委ねていく。
 彼の怒りの根底にはある楽観した甘えがある。それは願えば夢は叶う、という「アメリカンドリーム」という名の強烈な幻想である。その幻想が、現実を受け入れることを拒否してしまう。彼は一粒の砂であると自覚しながら、一粒の砂で終わる運命を受け入れられなかった。


 これは、愛も夢も失った男の、狂気へと至る記録である。もしも彼が身の程を知っていたなら、と思う。強烈な成功者への夢と、もの凄い勢いでドツボにはまっていく現実との壮大なギャップ。そこにのたうち回る彼に共感できるなら、この映画は泣ける。だけど俺にはあまり感情移入できなかった。
 駄目男は大別すると二種類いる。愛すべき駄目男か、そうでないかだ。俺には後者としか思えなかった。だから、俺の目線は、彼をあきれ顔で見るドン・チードルの方に重なってしまうのだ。せめて彼が自分の境遇を笑い飛ばす力があったのなら、救われたのにな、と。(★★)