ショーンもない話。
彼女に振られたショーンに、ろくでなしのルームメイトはこう慰めた。
「この世に女が選り取りみどりとはいわねえ。だけどな…愛する女に振られたとしても…世界の終わりじゃねえ。」
そして世界は終わり始めた。
ようやく「ショーン・オブ・ザ・デッド」(劇場未公開)のDVDを見た。
タイトルの通り、イギリスで作られた「ゾンビ」(DAWN OF THE DEAD)のパロディ映画である。
イギリス。
ショーンの人生はしょぼくれている。彼女と行くのはいつものバー。いつも文句を言われ、レストランに予約を失敗し、そのフォローに失敗して別れるハメに。ルームメイトは無職でヤク中でアル中で家事も掃除もしないひきこもり。同僚には馬鹿にされ、母親と再婚したむかつく義父は毎日職場にやってきて、「母親に花束を」と言う。
もういやだ、こんな生活なくなってしまえばいい!
…と言ったか知らないが、世界は確実に崩壊を始めた。ショーン本人の気付かないところで。
街がゾンビだらけでも気付かずにルームメイトと飲んだくれ、朝目が覚めると庭に女が侵入してる。彼女がゾンビと判明して、ようやく彼らは気付く。街がゾンビだらけであることに…って遅ェよ!
てなわけで、ゾンビを題材にしたコメディなんだけれども、どちらかというと「もしも(俺たちの)イギリスでゾンビ現象が起きたら?」というシチュエーション・コメディなのだと思う。「十二人の怒れる男」に対する「十二人の優しい日本人」のようなアプローチ。だから、ゾンビの定型やドラマ立てには驚くほど忠実。彼らが立てこもるのはショッピングモールではなくいつものバー。ショーンはクリケットのバー片手にがしがしゾンビをつぶしていく。愛しい人を手にかけねばならない葛藤のドラマも存分にある。
なにより、彼らの等身大ぶりは、こちらが身につまされるほどで、そういう意味では本家よりも切実にドラマに没入できる傑作コメディになっているのでありました。
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http://www.apple.com/trailers/focus_features/shaunofthedead.html