虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

携帯哀歌

toshi202005-02-26



 「セルラー」を見た。


 突然さらわれ監禁された人妻。部屋の詳しい場所もわからない。部屋には壊された電話機がひとつ。それをいじっていたらある携帯電話にかかった。取ったのは他の街にいる見も知らない青年。人妻の頼みの綱はそのケータイとのつながりだけ…。


 というワンアイデア・スリラーである。
 こりゃあ、登場人物の一挙手一投足で状況が二転三転するサスペンスに違いない!とある程度の期待を込めて見たのだが、登場人物の一挙手一投足ごとにその期待が萎えてくる映画であった。電話を取った青年(おそらく無職)が、事件解決の鍵を握るんだけれども、こいつに全然感情移入できなかったのだ。
 青年は、海で彼女に頼まれた仕事をほっぽり出して、かかってきた電話の言うがままに行動を開始するんだけれども、携帯電話をつなぎきるために取る行動が異常。充電器を急いで手に入れるために携帯電話ショップで拳銃をぶっ放し、相手を追跡してたら運転を誤って高速道路で逆走し、ケータイが混線すれば、混線したケータイの持ち主の車とケータイを強奪し、トンネルがあれば携帯が切れるからとまた逆走し、空港ロビーに入らなければならないとなると、見も知らない人のコートからチケットをちょろまかす。


 なんだ、このちんぴらは。


 しかもただ、見も知らない電話の相手のためにそこまでする明快な理由は彼にはない。必死こいて、周りに迷惑をかけ、悪びれることもない。しかも、お前はジェイソン・ボーンか、って位、短時間で真犯人に接触するご都合主義っぷり。


 まあ、それだけならまだB級サスペンスとして許せなくもないのだが、キャストにアカデミー賞女優、キム・ベイシンガーや、俺がハリウッドでも一、二を争うセクシーなハゲ男優だと思う、ジェイソン・ステイサムという豪華キャストの使い方がまた最悪。
 監禁された人妻を演じたキム・ベイシンガーは「松坂慶子」みたいな大仰な演技で、「土曜ワイド劇場」な雰囲気を醸しだし、主犯格を演じたジェイソン・ステイサムは器も知能も低い小悪党でやんの…。ももも…もったいねえ…。二人とも、こんな程度の役者じゃねーだろーが!
 人妻を誘拐した悪党が、どう考えたって割に合わない計画を無理矢理実行しているのが明らかになるに至って、絶望的な気分になった。


 唯一の救いがウィリアム・H・メイシーが、定年間近の警官のしょぼくれぶりを好演したこと位なんだけど、それじゃ到底、俺の期待には埋め合わせにならない…。久々に意気消沈して劇場を後にした映画。