虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

2013年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。

toshi202013-12-30




 どうもです。紆余曲折ありながら、今年もなんとかかんとか更新してます。


 てなわけで、今年見た映画の中から「良かったな」とおもうものを10本選んでみました。今年は本当に、様々な傑作秀作と出会えた年で、本来なら20本30本くらい紹介してもいいのですが、キリがなくなるので、あえて選んだ10本、と思って見てくだされば幸いです。
 泣く泣く削りながら、自分が「本当に好きな」映画を選んだ10本ということで。「あの作品が入ってない」「この作品が入ってない」ということはあると思いますが、ご容赦ください。


10位「シュガーマン/奇跡に愛された男」

感想:遠き異国に咲いた夢 - 虚馬ダイアリー
 文章を書いたり、音楽をつくったり、なにかを表現するということは、心のどこかで誰かに届いてほしいと思いながらやっているものである。自分が正しいと信じ、表現したものが、意外な形で花開いた男の数奇な物語。見終わったあとに、その「奇跡」がまるで我が事のようにうれしくなってしまう、希有なドキュメンタリー。

9位「しわ」

感想:そして、俺たちは雲をつかむ - 虚馬ダイアリー
 スペイン発のアニメーション映画の傑作。老人ホームを舞台に「老い」と「病」によって少しずつ壊れていくことへの恐怖を物語の吸引力にしながら、物語は意外な方向へと舵を切る。「壊れゆく人間」への現実を直視しながら、決して人間への希望を失わない。その視線の暖かさがすばらしく、胸打たれた。

8位「偽りなき者」

偽りなき者 [DVD]

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感想:無邪気の烙印 - 虚馬ダイアリー
 あるデンマークの田舎町で、ひとりの幼い子供のきまぐれによって、本人の預かり知らぬところで、自分に身に覚えのない「犯罪」を行ったことにされ、それによって、人生を破壊されていく男の逆襲を描いたサスペンス。「善人」だらけの村であれ、一度「汚名」を受けてしまうと、その「善良」は容易に「悪意」に裏返る。実は、だれも「悪人」のいない物語であるからこそ、この物語は本当に怖いのである。

7位「ペコロスの母に会いに行く

ペコロスの母に会いに行く

ペコロスの母に会いに行く

感想:「いのちの記憶」に出会うまで 「ペコロスの母に会いに行く」 - 虚馬ダイアリー
 85歳の監督と89歳の主演女優によって生み出された傑作。バツイチのハゲちゃびんの50男から見た、認知症の母親との介護の日々から浮かび上がる、彼女の人生。老人介護というムズカシイ題材を全編コメディとしてくるみながらも、母親の明滅する人生の記憶が、一気に具現化していく、美しいラストに激しく揺さぶられた。

6位「グランド・イリュージョン

感想:ナポレオンズなんかぶっ飛ばせ - 虚馬ダイアリー
 外連という言葉を身体で知ってる職人監督が、外連に次ぐ外連によって出来上がった4人のマジシャンによる犯罪劇を撮る。これで面白くないわけがないのである。次第に大きくなっていくマジックのスケールとともに、ある意味荒唐無稽な真相が明らかになるラストまで、一気呵成に見せきった。こういう「娯楽映画」の肉体を持った映画こそ、僕が愛してやまないものである。

5位「風立ちぬ


感想:うごめく世界の片隅で「風立ちぬ」 - 虚馬ダイアリー
 堀越二郎という実在の人物を、堀辰雄の「風立ちぬ」の世界を絡めて、自らの妄想を織り交ぜながら世界の有り様を含めて自分の物語へと書き換えてしまう、宮崎駿本意気の妄想映画。「再創造」された世界を生きる二郎が最後に見る景色は、まさに宮崎駿が見ている人生の風景なのではないか。そう感じた映画でした。

4位「ローン・レンジャー

感想:馬立ちぬ いざ生きめやも - 虚馬ダイアリー
 今年の夏は「パシフィック・リム」をはじめ、様々な洋画の大作が話題をさらったわけですが、その中でもこの映画が飛び抜けて面白かった。特にラスト16分の列車での大アクションはスバらしい!怒濤のアクションつるべ打ち!本当に映画館で見られたことに感謝であります。

3位「殺人の告白」

殺人の告白 [DVD]

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感想:追憶では終わらせない「殺人の告白」 - 虚馬ダイアリー
 「殺人犯」であることを告白した男によって起こる狂騒。実際に起きた連続殺人事件をモデルにしながらも、テレビやマスコミを使った劇場型犯罪劇映画へと塗り替えた、韓国発の娯楽活劇。重い題材でありながらも、軽さを失うことなく、娯楽映画としての面白い要素をすべてぶちこみ、それでなお緊迫感が途切れない演出、ツイスト効かせた脚本によって、二転三転していく。殺人被害者の情念が爆発するラストまで、面白さの波が途切れないザッツエンターテイメントである。三池崇史が、同じ劇場型犯罪映画「藁の楯」で到達しえなかったレベルの作品を、三十代の監督が撮り上げてしまったという、韓国映画の底力に驚嘆する一作。

2位「かぐや姫の物語


感想:千年偶像<アイドル> 「かぐや姫の物語」 - 虚馬ダイアリー
 昔では決してなしえなかった表現を取り入れつつ、アニメーション界きってのストーリーテラー高畑勲が、「竹取物語」の世界をかぐや姫の目線から再創造した物語。78歳にして決して新たな表現への貪欲に挑戦し続ける天才監督が「ホーホケキョとなりの山田くん」で種を植えた表現にさらなる進化を見せつつ、彼だからこそなしえるレベルにまで引き上げた演出力で、かぐや姫という少女の、繊細な心の機微にまで寄り添う。その瑞々しいまでの活力!そのみなぎる力強さに138分という上映時間中、圧倒されっぱなしだった。

1位「マリーゴールド・ホテルで会いましょう

感想:書けぬほど好きな人々 - 虚馬ダイアリー
 この映画を見たのは今年の初めの頃のことなのであるが、見た後「好きすぎて感想としてまとめられない」としてくらい、僕はこの映画が大好きである。7名の英国の老人たちが、新天地インドのオンボロホテルで新たな人生を始めることになる群像劇なのであるが、それぞれのキャラクターが有機的に動きながら、決して自然さを損なわない脚本のドラマ構成と演出が卓越していて、物語がすっと身体に染みいるような洗練された映画である。それでいて、出てくる人々が全員個性的かつ魅力的で、愛さずにはいられない。そして、ある人物が、独りの男の背中を押す姿に涙。前向きなメッセージもスバらしい。
 本来、そんな映画をこそ見たいのである!ということで、多くの傑作群をさしおいて、あえてこの映画を1位とさせて頂きます。