虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

2012年に見て「良かったな」と思った映画から10本を選んでみる。

toshi202012-12-28




 どうも。更新量はぼちぼち戻ってきました。大体の映画が面白かった気がします。
 しかしまー、今年も様々なものを見逃してしまっている気がしてなりません。「あれも見てない、これも見てない」という後悔が、恒例行事になっている私が今年の10本を選んでみました。今年も、ハイセンスな映画選びみたいな路線はハナから捨ててます。エヘ。
 ではいきます。
 

10位「ももへの手紙」

感想:かくて少女は見守られる - 虚馬ダイアリー


 いやー、あまりに待望すぎて先行上映している広島まで見に行ってしまった。自分が映画感想を書き始めた頃にデビュー作を見てぞっこんになった沖浦啓之監督の、「人狼 JIN-ROH」以来12年ぶりの新作。思った以上に優しく、そして暖かい映画になったことに驚くと同時に、ようやく新作が見られたという、ただそれだけで、頬がゆるんでしまう映画でした。存在してくれるだけでうれしい映画というものは、あるのだな、とつくづく思います。生きてて良かったと思うのです。
 12年待つのは長いです。次はせめて5年後くらいに新作が見たいです!というエールを込めてランキングにぶち込みました。

9位「任侠ヘルパー

感想:特等席なき人生たち - 虚馬ダイアリー


 破壊屋さんの名物企画「この映画はいったい誰が観に行くんだ!?大賞 | 破壊屋」が今年も開催され、ボクも票を投じてきました。この企画は大変面白い試みだと心から思っていますが、同時に「誰が見るんだ」という映画は、実は映画の「豊かさ」の裏返しでもあると、最近思うようになりました。
 ボクは「映画が作られ続けること」そのものに希望があると思っています。出来上がった映画が駄作になったとしても、その観客を怒らせたり嘆かせたり、その映画が誰にも知られずに消えていくことがあったとしても、映画が作られ続けることは、とても大切なことだと思います。
 今年、フジテレビは「踊る大捜査線」が終わり、「海猿」が原作者を怒らせて打ち切りだそうですが、それでもなお、長年「映画を作り続けてきた」という積み重ねが今、この映画や「テルマエ・ロマエ」や、「終の信託」などに結実したことはとても素晴らしいことだと思います。こんな時だからこそ、フジテレビは「映画」を作り続けていくべきなのです。作られる限り、「映画」は続くのです。

8位「悪の教典

感想:虐殺教室 - 虚馬ダイアリー

 ただ、生徒が快楽殺人鬼の教師に虐殺されるだけの映画ではなく、殺される側の圧倒的な絶望と、殺す側の圧倒的な快楽を同居させつつ、エンターテイメントに仕上げる三池崇史監督の、善悪の境界線を軽々と越えていく圧倒的バランス感覚に唸る一作。サイコパス教師役への伊藤英明の起用もドンピシャとハマリ、彼の時代劇の殺陣のように流麗な殺戮シーンに思わず「あ、これ気持ちいい?」と思わされるさじ加減が絶妙で、生徒側から見た「恐怖と絶望」と、殺戮の「快楽」の行ったり来たりに汗びっしょりでした。


7位「かぞくのくに」

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国境線はここにある - 虚馬ダイアリー


 二つの祖国を持つ家族の物語。在日朝鮮人の家族の元へ、帰還事業によって日本から北朝鮮へ行った兄が、脳腫瘍の治療の為に、日本に帰国してくる。家族との団らん、旧友との再会。そんな一時の日常の中にも、国境線がある。そして、非情な知らせが、家族を揺さぶる。
 在日朝鮮人であり、自分の家族についてのドキュメンタリーを撮り続けてきたヤン・ヨンヒ監督が、初の劇映画を撮った。それは同じ「自分の家族」についての映画だけれど、フィクションだからこそこの映画は「私映画」の枠を軽やかに越え、まぎれもなく普遍性を持った、日本のどこかに必ずいる「家族の物語」として、静かな重みを持ってそこにある。


6位「スカイフォール

感想:ジェームズ・ボンド、帰還の挨拶 - 虚馬ダイアリー

 「カジノ・ロワイアル」「慰めの報酬」と描いてきた「殺しの番号」取りたてホカホカのチンピラスパイという異色のジェームズ・ボンドの物語は、「スカイフォール」によって、ついに「本物」へと至る試練が待ち受ける。ダニエル・クレイグ演じる、この愛すべき「人間」ボンドが「過去」と向き合い、喪うことで得たものによって、ようやく新たなステージに立つことになる。3作続けて語られた21世紀生まれの新生「007」は、この作品によって、新世紀仕様になってスタートラインに立った。そのことをただただ喜びたいと思う。

5位「桐島、部活やめるってよ

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感想:特別は僕のなかにある - 虚馬ダイアリー
 この映画に関しては色々思うんですよ。俺、公開2日目に見て絶賛したにも関わらずですね、後から見た人が言うわけですよ。「まるで俺のための映画だ」と。みんながあんまり「俺の映画!」「俺の映画!」という感じで褒めるもんだから、もうね、俺は心からこう叫ぶね。「違うね!言っておくけど、俺の方が先に見て「傑作」って褒めてるしね!吉田監督のデビュー作だって絶賛したし!だから俺のでしょ!むしろ俺のでしょ!俺の!俺のだもんね!バカー!」と!←子供か。そんな、多くの映画ファンが「俺の映画」と言いたくなるほど、心の吸引力ハンパない傑作。
 

4位「ロボジー

感想:偽ロボ語-ニセロボガタリ- - 虚馬ダイアリー
 あえて、「桐島」の上に置いておきます。運悪く壊れてしまったイベント公開用の試作ロボットの代わりに、ロボットの外郭に入った老人とダメダメ開発員3人組に、ロボットオタクの大学生が絡むシチュエーションコメディ。「ハッピーフライト」の時も感じたけど、矢口史靖監督はここんとこ撮るごとに格段にうまくなっていってると思う。ベタベタと言われようと、ここまで頭からっぽにして笑えて、吉高由里子がめちゃくちゃ可愛く撮れてて、そして思わず拍手しちゃうような粋なラスト。物語がご都合主義だっていいじゃない!楽しければそれで!と言いたくなる。超大好きな映画。進化し続ける矢口監督のその先にも期待します。

3位「アベンジャーズ

感想:アベンジャーズ売出す「アベンジャーズ」 - 虚馬ダイアリー
 この映画を見ていて思いますけど、本当にすごいものって一見してすごいと感じさせる前にただただ「面白い」と思わせる映画のことを言うんだと思います。この映画はすごいことをすごいと感じさせないで、マニアからそうでない老若男女問わず無条件で楽しめる、圧倒的な「娯楽映画」であることがとにかく、すさまじい。主演級のキャラクターを集結させて地球を救うという、アメコミという世界観の懐の深さや遊び心、それを本気で大計画を進めながら、見事にひとつの驚くべき成果にしてしまう、ハリウッドの底力を見た思い。何回見ても飽きないのがとにかくすごい。

2位「アルゴ」

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感想:これは映画である「アルゴ」 - 虚馬ダイアリー


 このエントリで、ボクは「作られ続ける」ことの意義について書いてきた。「映画を作る自由」という当たり前のこと。それが革命の風が吹きすさぶ中で命の危険にさらされた同胞を救う映画である。
 話は1位の項に続く。

1位「これは映画ではない


感想:「映画である」と言ってくれ。「これは映画ではない」 - 虚馬ダイアリー
 ボクが「アルゴ」で感動したのは、本編の出来映えもさることながら、この映画を見た後だったことが大変大きい。
 「アルゴ」がイラン革命まっただ中の世界で、「新作映画のロケハン」と称して潜入し、同胞を奪還する。その約30年後の現在。一人のイラン人映画監督が、「映画を撮る自由」を失っている。


 「白い風船」「オフサイド・ガールズ」などの作品で世界的名声を得ながら、政治的理由で不当逮捕、そして「20年間映画製作禁止」を言い渡され、自宅軟禁を余儀なくされている映画監督ジャファール・パナヒ監督。この映画は「映画ではない」と自嘲気味に冠した、彼の「新作映画」である。「映画を撮れない」はずの彼の「新作映画」は何故存在するのか。それがこの映画の肝である。
 この映画は、「映画を撮りたい」と心の底から願う映画監督の本気のドキュメンタリーであり、本気のフィクションである。この映画を1位にすることに、ボクは何の躊躇もない。是非1度ごらんになって頂きたい。この映画の「存在」そのものに瞠目するはずである。


 そして、かみしめて欲しい。どんな映画であろうとも「作られ続ける」ということは実に幸福なことなことなのである。ぼくらはこの先、その「自由」と「尊厳」を守っていけるのか、これからも真剣に考えたい。そんな2012年映画ベスト10でした。



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