虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」

toshi202011-12-18

原題:Mission: Impossible - Ghost Protocol
監督:ブラッド・バード
製作:トム・クルーズJ・J・エイブラムス、ブライアン・バーク
脚本:ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック



 トム・クルーズの虎の子シリーズ、第4作目です。


 前作「M:I:III」(以下「3」)が公開されたのは伊藤計劃さんがまだご存命の頃で、伊藤さんが3作目で大変に不満に思ってらっしゃったのは、『既にイーサン・ハントはヒーローなのに「妻を娶って人間・イーサン・ハントを描く」などという姑息なことすんな』*1というものでした。
 でまあ、「3」に好意的だった私はそのエントリに絡んで「奥さんを娶らせたということは、3作目で打ち止めというトムの決意表明なのではないですか?」などと、僭越なコメントに書いてみたりしたことがあります。
 ・・・で。結局作られましたね、4作目。えへ。


 さて。
 「3」に否定的な伊藤さんと「3」に肯定的なわたくしが共通してる見解は、「スパイが妻を娶るというのは致命的な欠陥である」ということでした。それでもイーサンは、愛する彼女と結婚したわけです。4作目は、「致命的な欠陥」を抱えたヒーロー、イーサン・ハントの後日談となります。


 そんな4作目を作るにあたって、トム・クルーズはどうしたか。何の因果か、「ヒーロー」が家庭を持ったアニメ映画「Mr.インクレディブル」を監督した、ブラッド・バードを招聘することになったわけですね。


 この映画のプロットは、第1作目への原点回帰というか、要は「巻き込まれ型主人公」イーサン・ハントが帰ってきた印象です。とにかく、七転八倒の繰り返しです。想定外の任務に、揃ったガジェットは整備不良、チームは急造で、有能ではあるが現場経験が少ないおしゃべり男に、優秀ではあるが標的に私怨を抱えた女に、イーサンにとある秘密を抱えた分析官と言う面々。そんなやつらと「自らの破滅」を賭けた任務に挑む羽目になる。
 とにかく問題山積で、イーサンは常にわちゃわちゃしっぱなしです。ドバイの超高層ビルのシーンなんて、ジャッキー映画と見まごうばかりのわちゃわちゃぶりで、仲間の準備不足の尻ぬぐいに、超高層ビルでの命がけのアクションを迫られる「必死すぎるイーサン」は必見です。


 そして、やっぱりネックだったのは「ハント夫人」の扱いです。イーサン・ハントがスパイ稼業を続けるのならば、奥さんは明らかに任務の邪魔以外何者でもありません。ここで、プロットはさりげなく「奥さん」を巡るミステリーも、メイン・プロットに関わってきます。
 映画冒頭で、イーサンは観客が想像もしない場所にいます。何故、かれがそこにいるのかという「謎」が冒頭で提示され、その「謎」を抱えたまま、物語は一気呵成に進んでいきます。そして、その謎が晴れた時、伊藤さんが不満を感じた「妻を娶ったヒーロー」イーサン・ハントが出した、一つの答えにたどり着きます。


 前作での持ち上がったイーサン・ハントの「欠点」を、本作ではどうしたか。そこに注目してみると、この映画はより味わい深いものになるのではないでしょうか。ブラッド・バードの画づくりは、エイブラムスが持つ「テレビ的」なせせこましさがなく、実に「映画的」であり、そういう意味でも前作に不満に思った人ほど必見の作品に仕上がったと言えるかも知れません。是非大スクリーンでお楽しみください。(★★★★☆)