虚馬ダイアリー

「窓の外」のブログ

「ヘアスプレー」

toshi202007-11-21

原題:Hairspray
監督:アダム・シャンクマン
脚本:レスリー・ディクソン
音楽:マーク・シェイマン



 あー楽しかった。


 と思って劇場を出た。おデブ系ヒロイン・トレーシー演じるニッキー・ブロンスキーが魅力的なのがなによりいい。女装したジョン・トラボルタクリストファー・ウォーケンとの新春隠し芸みたいな踊りの激しい虚構性に悶絶しそうになったのも含めて。ある意味、今時それを堂々と押し切った辺りは、最後には感心してしまった。
 まあ、そんな映画なわけで、単純に言えば、あまり考えずにみるのが正しいのかな、と思う。ていうか、それで終われたら良かったんだけど。
 この映画自体はかなり前に見たんだけど、ずうーっとどう書こうか悩んでしまって。


 この映画のいいところは「人種問題」という難しい問題を難しくは語っていないことだと思うわけだけど、ただね。うーん。この映画はいささか脳天気に流しすぎな感じがしてしまって、ちょっとね。軽く絶賛することがどうしてもためらわれてしまって。ボルティモアってあれからが大変なわけで。そう考えるとみんなで踊って解決!スペース!チャンネル5!ポーウ!みたいなクライマックスはね(<なんだそれ)どうなんだろかと。



 ただ。結局のところ、この映画は啓蒙しようという意識が希薄ということかもしれない、と思い直したりもした。「こういう大変なことがあったんだ」ということに触れながら、それでも踊ればその痛みも一瞬やわらぐ。道のりは長いからこそ、踊って景気づけ、という側面もあるのかもしれない。
 「サウスパーク映画版」も担当したマーク・シェイマンの音楽は、当時の厳しい世相をえぐりながらもそれでも最後には希望を歌い上げる。彼らが戦うべき未来は厳しいからこそ、唄って踊って1960年代という「今」を肯定することで、現在まで続いてきた「マイノリティの抵抗」を軽やかに肯定する。その姿勢も含めて、「楽しかった」という、純粋な感慨が生まれたのだろうか、と思う。
 そういう意味では、ミュージカルの力を示した映画として肯定しても良い、と思った。大好き。(★★★★)